読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、3人の子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

3月9日と卒業ソング

 記念すべき50投稿目。

 明日は3月9日。レミオロメンを思い出す。

3月9日

3月9日

  • 発売日: 2019/10/01
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  ただ、卒業というとどうもユーミンの卒業写真を思い出す。これはおそらく、自分自身はあまり卒業というものを楽しんでいなかったからだろう。小学校の卒業式はとにかく練習が面倒だった記憶しかないし、中学校は終わりの方にやや不登校気味で、早く卒業したかった。中学校の卒業式の帰りに、あーこれでこの学校ともおさらばできて嬉しい!みたいなことを口走ったら、ヤンキーにガン飛ばされたのも嫌な記憶としてこびりついている。高校と大学は繋がってたし男子校だったから全然卒業って感じはなくて、大学では留年したから卒業の区切りが微妙な感じになった。いずれにしても、別れを惜しむような卒業というのは未だかつてしたことがない。それで、むしろ小学校も卒業していなかった頃に親の運転する車で聴いていたユーミンの卒業写真だけが頭に残っているというわけだ。

 

卒業写真

卒業写真

  • 発売日: 2018/09/24
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

  僕は人間関係をとにかく引っ張るたちで、自分から誰かと縁を切るようなことはない。なんというか、僕にとっては誰もが愛おしい。パワハラ上司も、メンヘラ女子も、そういうレッテルで括れば括れないこともないが、それぞれ個別の事情があって、それぞれの個性の中で頑張っていて、その上で僕と独自の関係性があって、そうすると、誰もがかけがえのない相手になってしまう。心底から憎んだり、嫌ったりすることができない。中学時代の僕の逃げ場だった塾の同期とは未だに飲み会をやることがあるし、元カノを結婚式に呼んで出し物までしてもらってしまった。そういうのは、なんかあまりないことなのかもしれないけど、僕にとってはすごく自然なことだ。そうすると、卒業して離れ離れになるということが、あまり起きない。

 もちろんこれは、メールやSNSの発達も大きい。ずっと繋がっていられて、いつでもやりとりできる。だから、気が向くと声をかけて遊びにいってしまう。コロナでここ1年ほどそういう機会がないのは、僕にとってはとってもストレスだ。その間に転職したり海外へ行ったりする人も結構いて、むしろ今の方が「今生の別れ」が起きやすいかもしれないと思うほどだ。でも、僕にとってはみんなどこかで生きているのを感じるような気がして(死んだりしてる場合もあるんだろうけど)、やはりこう、離れ離れな感じがしない。卒業というのは、ある種、自分の意識の部分も大きいのではないか。卒業式とか諸々の儀式によって、自分がもうそこから「卒業した」と強く思うことで、その場での関係性を断ち切る。それをやらないと、全ての物事がフェードアウトのような感じで進んでいく。その意味では確かに、僕の周りからいなくなった人というのもたくさんいる。出会うときはいつも突然だが、いなくなるときは自然だ。

 

ラブ・ストーリーは突然に

ラブ・ストーリーは突然に

  • 発売日: 2014/04/11
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 卒業というのは、もう一つ、やり遂げた、というニュアンスをも含んでいる気がする。その意味でも、僕は卒業というのをあまり経験していない。確かに学業は、一応課程を終了したという意味で卒業はしている。しかし、部活を全力でやり遂げたりとか、仕事とか課題とかをしっかり最後までやったという形で卒業することは、まずない。だいたい途中で放り投げるか、途中で挫折して退場する、という形になってしまう。どこに行っても自分の能力が足りない気がしている。それはある種の被害妄想なのだろうけど、でもその妄想に耐えきれずに潰れてしまうのだ。だから、なにかから「卒業」できることもないというわけ。

 とはいえ、ゴールがなにか明確な形で区切られていないと、そういう意味での卒業もない。どうせ何をやってもゴールは次々に現れる。人類の頂点に立つまでゲームは続く。「あと何度自分自身 卒業すれば 本当の自分に たどりつけるだろう」と歌う尾崎豊の気持ちはよくわかる。本当の自分などないのだ、卒業に向かい、卒業に向かうコースに抗う自分しか、そこにはいないのだ。自分はそのコースから外れたいと思っていても、自分というものはそのコースに照らしてでしか把握できない。 アナーキーでかけらとして散らばっている自分、というものを認識することは、ほとんどの人には為し難いことだ。

卒業

卒業

  • 発売日: 2014/04/01
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  卒業せずに生きられるような、あるいは卒業というゴールをおかずに生きられるようなあり方を自分が肯定できれば楽だろうと思う。だけど、そういうことを考えるたびに、僕は僕の無力感、無能感、劣等感に打ちひしがれることになる。そして、ハムスターのように自ら回し車に乗って走り出すことになる。進むこともなく、下がることもないが、そこで走っていることに安心できる、というわけだ。虚しく、くだらないことだ。

 とはいえ、自分の生まで卒業してしまう気は、今のところの僕にはない。これまで卒業せずに関係性を築いてきた人たちと、僕はもっと楽しい時間を送りたいし、もっと親密になって色々なことを吸収したいと思っているからだ。かなりか細い感じではあるけれど、僕の青春の日々は続いている。それは、僕がこの世を卒業するまで、不登校にならずに続けたいと思える、もっとも長い履修課程である。

 

終わりなき旅

終わりなき旅

  • 発売日: 2020/10/01
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