読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、3人の子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

東武30000系の思い出

 この記事では、東武30000系の話をしようと思う。

 「最近会った東急8000系ファミリー - 読んだ木」の冒頭で、今年の4月ごろだったか、東京メトロ半蔵門線東急田園都市線を利用する際に東急8500系に乗った話を書いた。そのとき、途中駅で東武30000系とすれ違った。久々の再開で嬉しく慌ててホームに飛び出し、カメラを向けたものの、うまく撮ることはできなかった。

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ブレブレ。スマホで地下の暗い空間で撮るのには限界がある。ISO感度を高く設定できるカメラで高速シャッターを切らなければいけない

 側面の、「東武動物公園」を圧縮せずに表示できる長いLED行先表示器が愛おしい。しかし、急行表示のない単なる「押上」だけでは宝の持ち腐れもいいところである。

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東武30000系の長い行先表示器

 後で気がついたが、これは本線系統で最後の一編成だった31609F(+31409F)である。この2ヶ月後、6月頭に運用離脱して、現在東上線向け改造工事を受けているそうだ。

 多分この形式を半蔵門線内で撮ったのはこれが最初で最後だろう。と思ったら、以前にも同じ編成の写真を撮っていた。

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これは2017年、半蔵門線のどこかの駅、おそらく永田町で撮った東武30000系で、やはり31609F+31409Fだ。

 なお、東上線に行った編成も何度か見かけている。しかしどうやら、写真に収めたのはほとんどなかったようだ。一つは、2017年の暮れに池袋駅で撮ったこの一枚。

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31613F+31413F。発車シーンを動画で撮っていた。

 もう一つは、2019年4月に撮った31610F。

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 前に「東武博物館への思い入れ - 読んだ木」の記事で書いたが、僕は小さい頃から東武線の近くに住んでいて、東武の車両はなんとなく好きだった。それで30000系が出た時も、一目で好きになった。6050系、新顔8000系、10030系を引き継ぎつつも、阪急の血を引いていることを思わせる(東武鉄道の車両は阪急の子会社だったアルナ工機が長く手がけていた)より落ち着きのあるクールな表情。10000系列は前面が分かれているが、こちらは一体的に形成されているのが綺麗なのだ。それでいて、内面にはどんな長い駅名でも受け入れてくれる横長のLED表示器。南栗橋から中央林間まで走り抜くタフさ。東武で先駆けて、一両だけPMSMを載せて走る進取性(31602Fのモハ35602)。

 その生い立ちも涙をそそるものだ。営団半蔵門線および東急田園都市線直通に備え、10030系の進化版として華々しく登場したが、那智暴虐なる直通先の圧力により、10年足らずで50050系に引導を渡す形で地下鉄直通運用から追い出され、遠く栃木県の鈍行にあてがわれたり、浅草と北千住の間をちまちまと往復するような運用につかされたりしていた。登場から15年ほど経った2011年に東上線に転属し、それからは伸び伸びと過ごしているようだ。9000系が地下鉄に直通し、横浜みなとみらいにまで行っているというのに、よっぽど高性能で美形の30000系が埼玉の奥地との往復にしか携わらないのは腑に落ちないが、それでも伊勢崎線複々線区間を彷彿とさせるようなストレートの多い東上線の走行を、30000系なりに楽しんでいるようだから何もいうまい。31609F+31409Fだけが伊勢崎線に残されていたが、それももう撤退して東上線に移るということで、当然地上運用限定だから、池袋かそれより先に行かないと会えないということになる。おそらくもうほとんど見かけることも無くなるだろうと思うと少し寂しいものがある。絶対にないだろうとは思うが、もし奇跡が起こるなら、東武9000系9050系の引退に合わせて直通対応機器を載せ替え、相当の改造をやって30000系をメトロ副都心線東急東横線横浜高速鉄道みなとみらい線まで直通させてほしい。東急5000系の一部車両は田園都市線東横線も、そしてその直通先も走ったことがあるものがあるから、両線はある程度共通化されているといってよい。そうすると、案外改造も信号機器対応などだけで済むかもしれない。それでもあまりコストに見合わないとは思うが、こういうことを妄想する分には楽しいものだ。行先表示器には、「特急 元町・中華街」、なんなら「Fライナー 元町・中華街」を表示するのに十分なスペースがある。

 

 

東武30000系は一部のいきったオタクによりサンマと呼ばれているらしい。こんな素晴らしい車両に対してひどいあだ名だ。ちなみに、目黒を通る東武の車両は、山手貨物線で通過するだけとはいえ、臨時品川始発スペーシア日光43・42号と多客臨の送り込み回送で品川へ行き来する東武100系がある。)

 

※車両ネタの記事では他に
東急1000系の話→東急池上線 車両いろいろ、1000系いろいろ - 読んだ木
京急2100形・1000形の話→くるりの「赤い電車」の芸の細かさ - 読んだ木
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