子供と箱根をぐるっと一周してきたのでそのレポート。
子供と遊びに行くときには、どれだけ逃げのルートを手数の中に持っているか、が重要になる。途中で電車を降りたくなったらこっちへ行き先を変える、あれをしたくなったらこれに乗る、疲れたらこれはパスしてこっちでショートカット、などなど。箱根はそれができる選択肢がたくさんあるから助かる。
小田急箱根登山線
小田原駅:小田原城こども遊園地
うちから小田原までもそれなりに時間がかかるので、もし小田原で力尽きて、もう遠くに行きたくないということになったら、小田原城にあるこども遊園地に行くつもりだった。
激安でおもちゃの汽車に乗れるし、城内は広いので行く場所にも困らない。ただ、遊具の充実した公園とか子供向けの場所は小田原市内にはほとんどないので、ちょっとだけ遊んだらもう帰る感じになると思うけれども。小田原の人たちがどのように子育てしてるのか謎なくらい、遊具の充実した児童公園みたいなものがない。
しかし、小田原時点ではまだ子供はピンピンしていたので、予定通り旅行開始。
小田原から乗ったのは小田急1000形更新車。なんの変哲もない……と思って写真にも撮らずにいたら、箱根登山線での定期運用についてからまだ数日しか経っていなかったらしい。
風祭駅:えれんなごっそ(鈴廣本店)
かまぼこの鈴廣に直結している風祭駅の手前から、鈴廣本店の広い施設の敷地の中に箱根登山鉄道のモ1形がおいてあるのが見えた。全く知らなかったので写真は撮れなかった。調べてみると、これは2019年に運行を終了したモハ107形で、同年鈴廣が譲受したものだという。
今はカフェになっているらしく、モハ107形の中にも入ったりできるようなので、子供も楽しめそうだ。ただ、それほど遊べる感じではなく、まぁパッと見て回って、あとはお茶を飲むぐらいの感じだろう。
このカフェが併設されているのはえれんなごっそというカフェ・レストラン施設で、大人はそれなりに楽しめるかもしれない。
入生田駅:神奈川県立生命の星・地球博物館
もしモハ107を見るだけだと子供はもたないが、ちょうどすぐ隣の入生田駅前には神奈川県の自然博物館、「生命の星・地球博物館」というのがある。
恐竜の骨とか、まぁなんか色々あってこういう科学系のことが好きな子供にはうってつけの施設だ。ここに行くことも代替手段のカードとして持っていたが、子供が楽しく電車に乗っていたのと、なんかまた予約制みたいなことになっていたので(そういう場合、公共施設は色々といちゃもんをつけて入館させてくれないことが多い)、今回はスルー。
そうするともう箱根湯本駅に着いてしまうので、予定通り登山鉄道に乗ろうということに無事あいなる。登山電車が嫌だったら湯本から箱根新道を通るバスで芦ノ湖に抜けてしまうという手もある。これは、子供がぐずる前にさっさと箱根の涼しいところへ上がってしまえるという点でいい手段だ。しかし、今回はそのような想定も杞憂に終わってくれた。
箱根登山鉄道
箱根湯本駅のホームに待っていたのは、なんと最古参モハ104、106、108の3両編成であった。104、106はモハ1形、108は残存する唯一のモハ2形である。原車が登場してからおよそ100年、剛体化されて今の見た目になってからも既に70年が経過している。
流石に吊り掛け駆動の音はしなくなっていたが(今はカルダン駆動)、クーラーはおろか扇風機すらない(屋根上に抵抗器があるため後付けできない)ために車内は蒸し暑く、それがかえって窓から吹き込む箱根山中の空気をいっそう清純なものに感じさせていた。
彫刻の森駅:彫刻の森美術館
箱根登山鉄道鉄道線沿線で唯一子供と楽しめる場所。登山鉄道の途中でへばったらここで遊んで帰ろうと思っていた。
でも、彫刻の森まで上がってきてもまだ暑いのなんの。平地からは相当上がってきているので、涼しいのかなーと思っていたのが甘かった。彫刻の森は広い庭と、そこで遊具のように遊べる彫刻やオブジェがあるのが魅力なのだが、如何せんこの暑さの中で外で遊ぶというのも酷であると思って、子供は少し降りたがっていたがそのまま次の終点強羅まで頑張った。
強羅駅:昼食を食べる場所はない
駅前の蕎麦屋がなくなっていて、子連れでリーズナブルにパッと昼食を取れる場所がないのに辟易した。しかし予想の範囲内ではある。ここで駅を出て暑いなか店を探し回ったりしたら一瞬でへばる。せっかくここまできて体力をそのように浪費してはいけない。
駅構内に、スタンドのようなホットドッグ屋がある。これ幸いと、迷わずそこでホットドッグを買ってベンチに座って食べる。ホットドッグ屋の店員さんがいい人で、子供むけに色々トッピングなどを調節してくれた。
箱根登山ケーブルカー
今回の主目的というか、家を出るときに子供が言っていたのはケーブルカーに乗りたい、ということであった。そこでようやくケーブルカーにたどり着いたのだが、子供はもう登山電車で満足していた。しかし僕としてはここまできて戻りたくないので、なんとなく流れでケーブルカーに乗る。子供は、車両の中に階段があるのが大いにご満悦だったようで、発車までなんども上がったり下りたりしていた
公園下駅・公園上駅:箱根強羅公園
とはいえ、子供はもう乗るのに飽きて公園に行きたいと言っている。ちょうど公園のところをケーブルカーが走っているので、「こうえん」というアナウンスに子供が反応するのだ。
公園下駅は公園正門、公園上駅は公園西門のすぐ横にあたる。よっぽど降りて強羅公園に行こうかとも考えたが、やはり暑くて外を歩くのは嫌だという思いと、公園が斜面にあるので尚更疲れるという危惧と、公演を楽しむにはうちの子は小さすぎる、という判断で、降りないでおいた。子供が中学生とかになれば、強羅公園とか結構楽しいかもしれない。その頃まで親と一緒に旅行するかどうかはさておき。
早雲山駅:cu-mo箱根
さあ終点の早雲山駅。ここまでくるとようやく山の上、という感がある。cu-mo箱根という、なんだか新しくて綺麗な建物ができていた。これはケーブルカーとロープウェイの早雲山駅の駅ビルで、展望デッキが気持ちいい。気温もここまでくればようやく涼しい感じになってくる。
若い女性が好きそうな(これはジェンダーバイアスがあるかもしれないが、マーケティング的な意味で)ショップが中にあったが、僕らは見向きもせずにロープウェイ駅へ。というのも、子供がにわかにロープウェイというものに関心を抱いたからだ。上に階段を上がって、高いところに行けるのがワクワク感を掻き立てたものらしい。
箱根ロープウェイ
子供は初めてのロープウェイではしゃいでいる。怖がるかと思ったがそんなこともなく、むしろ驚嘆が心を占めていたようだ。
大涌谷駅:大涌谷
大涌谷では、ハイキングして上まで歩いていき、玉子を食べて寿命を延ばして帰ってくる、というのが当初の計画であった。ところが、従前からの活発な火山活動の影響か、それとも大雨による地盤の緩みかわからないが、自然散策路は閉じられていて、大涌谷の駐車場のところの観光施設にしかいけなかった。
あのモクモクと湧き上がる煙を間近に見て、足元に硫黄岩が転がっているのが面白いのだが。まぁこればかりは仕方がない。また、黒たまごは5個セットで売っているので僕らはちょっと消費しきれない。そこで、たまごソフトクリームというのを買って食べた。要はカスタードクリームのような味のアイスクリーム、というわけだ。7年とまではいかないが、1、2年は寿命が延びたのではないだろうか。
伊豆箱根バス 湖尻・箱根園線 (J)
大涌谷まで来れたということは、この旅行で乗ろうと思っていた陸上交通は乗り尽くしたということである。もうこのまま帰ろうかなと思っていたが、またロープウェイとケーブルカーに乗るのもかったるいな、と思っていた。で、子供に湖行く?と聞いたら行く!というので、彼が「みずうみ」をどんなものと理解しているかは別として、芦ノ湖へ向かうことにした。ちょうどバス停にライオンズマークをつけた伊豆箱根バスの箱根園線が来たので、そのまま乗り込む。乗客も少なく快適だ。
しかし、小田急の箱根周遊コースであれば、ここからロープウェイで桃源台に出て、そこから船で箱根町に出て……というルートをとる。これに対し、西武の箱根園には何があるのかわからず、そこからどこかに抜けられるかどうかかなりあやしいところがあった。だが、もうだいぶ疲れていたので、まぁなんとかなるだろうと思ってそのまま乗って行った。バスは湖尻まで行ったのに目と鼻の先の桃源台には行かず折り返し、箱根園へ。
箱根園バス停:箱根園、龍宮殿、箱根園港
箱根園はしかし、予想より充実していた。水族館がある(ペンギンがいるらしい)。動物と触れ合うことのできる動物園がある(多分もこもこの動物がいる、アルパカだろうか?)。食事するところもたくさんある。隣の(ひとつ前のバス停)竜宮殿は日帰り温泉としても有名だ。要は、ここにある西武プリンスホテルの付属施設のような形で一種の複合リゾートが形成されているのである。
ありがたかったのは、「箱根園港」という港があって、ここから船で箱根関所跡港(小田急の箱根町港)や元箱根港に抜けられることだ。子供が船に乗りたいと言い始め、その願いをすぐに叶えることができた。しかしこれはGoogleマップの地図上には表示されていない航路だし、小田急も全然教えてくれない。おそらく桃源台と箱根町・元箱根を結ぶ航路と競合しているからだろうが、それにしたってもう少し宣伝してくれればありがたいのだが。
箱根芦ノ湖遊覧船 定期航路
かくて、登山電車、ケーブルカー、ロープウェイ、バスを乗り継いできた我々は、船に乗ることになった。
この写真の湖の正面に小さく小田急の箱根海賊船が映っていて、それは箱根町港に行くのだが、この船がいく箱根関所跡港と箱根町港とは、この写真でもほとんど隣り合っている。だいぶ共通化されたとはいえ、西武と小田急の鍔迫り合いの結果だ。しかし、そのおかげでスムーズに移動できたのはありがたかった。
元箱根港:箱根神社、おしゃれなカフェ
そのまま降りなければ、箱根関所跡港を経由して元箱根港まで行ける。元箱根にはメインの箱根神社のほか、テラスのついたパン屋とか、色々おしゃれなカフェとかあって、それなりに快適な感じなのを記憶している。
ただ、子連れの男が行くにはやや気が引けるほどおしゃれだし、暑いのであまり気が進まない。子供ももう降りるというので、箱根関所跡港で下船した。
箱根関所跡港:箱根町港、関所跡、箱根公園
箱根関所跡港自体には、西武のバスしか来ないので本数が少ないように見えるが、小田急のバスはその港の駐車場の南側の出口のところに「箱根ホテル前」バス停、北側の出口のところに「箱根関所跡」バス停を置いていて、これは実質箱根関所跡港バス停である。しかも隣の箱根ホテルのさらに隣には、小田急の「箱根町港」バスターミナルがあるので、非常に便利だ。ただそのことについての案内は全くと言って存在しない。Googleで調べれば一発であるが、それ以外では気づけないかもしれない。
もちろん、この横には関所跡があり、当時を模したジオラマやら何やらが色々ある。さらにその奥には箱根公園がある。いずれも暑いし子供には退屈だろうと思ってパスした。ただ、箱根関所は昔行ったことがあるが、なかなか気合の入ったいい展示である。
箱根登山バス 箱根新道線 (R)
「箱根町港」バス停からは、箱根新道経由箱根湯本行き、さらに小田原行きのバスが午後になると1時間に4本ぐらい出ている。早くて便利だ。もう子供も思う存分(乗り物に乗るのを)楽しんだので、これで下山することにする。ありがたいのは、箱根町港始発、ノンストップ、箱根湯本終着というバスがあることで、これに乗れば必ず座れる。知っている人は乗っている、というやつだ。子供は箱根新道を走っている間中、ぐっすり眠っていた。
旅の終わり
箱根湯本でバスを降り、箱根湯本からはレーティッシュカラーの1000形で小田原に戻る。小田原駅前地下の山安で干物の1000円パックを買い、1階のスーパーに入っている魚力で夕飯の寿司を土産に買うところまでが遠足である。あるいはこれが、この小旅行でもっとも重要な仕事だったかもしれない。
・子供と公園散歩シリーズ(?)