読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、3人の子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

事件は中華料理屋で起こっているわけではない

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 中国語教室への通学を開始して半年ちょっと。週1のペースで、途中保育園が閉まって行けなかった期間などもあったので、それほど目覚ましい進捗があったわけではない。日常会話ができるようになるには、あと半年ぐらいかかるだろう。

 ただ、勉強の成果は日々感じる。その一つは、中華料理屋での会話が聞き取れるようになったことだ。

 

* * *

 

 中華料理屋は安くて美味しく料理も多い、しかもどこに行ってもあることから、僕にとっては昼食の第一候補のようなものだ。しかし中華料理屋に行くと、しばしば厨房とフロアで怒鳴り合いが起きている。今日だったら、

フロア「スーヨンリンジー!イーフイグォーロゥ!」
厨房「ア?ドーシャオヨンリンジーマ!」
フ「スー!」
厨「スーヨンリンジーバ!」
フ「シャア!」
厨「ジーティエンヘンマンナー!アー?」
フ「ドヤー!」

みたいな感じである。落ち着いて食べたいというほど高級なものを食べているわけではないが、あぁ?とかあ゙ー!とか言って喧嘩しないでほしい、というのが正直なところだ。いくつかよく行く中華料理屋があるのだが、どこも大抵、厨房が男性でフロアが女性、夫婦か何かのような雰囲気があって、夫婦喧嘩を聞かされているような気になる。

 しかし、中国語を学んで、僕はわかったのである。彼等は喧嘩しているわけではなかった。今なら彼らがなんと話しているか、理解できる。

フ 〝四油淋鸡,一回锅肉“(油淋鶏四つ、回鍋肉一つ)
厨 〝啊,多小油淋鸡吗?“(はいよ、油淋鶏がいくつ?)
フ 〝四“(四つ)
厨 〝四油淋鸡,吧“(油淋鶏四つね)
フ 〝是啊“(そうだよ)
厨 〝今天很慢呢。啊?“(今日は忙しいね)
フ 〝对“(ほんとね)

普通の定食屋で交わされる会話と変わらなかったし、彼らは全く喧嘩してなかった。なんならお互いを労う暖かさすら感じられるレベルのやりとりだ。考えてみれば、(日本語話者的には)喧嘩しているような勢いで喋った終わりに、はっはっは!みたいな感じで笑い合ってたりしてたし、喧嘩ではないのだ。

 僕は悟った。事件は中華料理屋で起こっているわけではない。口の中でボソボソとしか喋らない日本語話者たる僕の誤解によって僕の中でのみ起こっていたのだ、と。

 

* * *

 

 ただ、ある中華料理屋のやりとりだけは、中国語を勉強しても全くわからないままだ。その中華料理屋というのは、餃子の王将である。

「ソーハンイガー、テンハンダイイーガー!リャンーガーコーテー!ヒトツヨクヤキィ!」

これは日中両語を融合した新しい言語と言って差し支えない。

 いずれにしても、新しい言語を学び、今までわからなかったやりとりがわかるようになるのは嬉しいものだ。ウォーのワールドのグレートなエキスパンドを感じる。なんのこっちゃ。

 

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