読んだ木

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東急バス渋43系統は便利なのか?

11月1日の開業を控えて設置された高輪ゲートウェイ駅バス停(東急バス)。仮設バス停と変わらない簡易な設置だ。

 

渋43系統 渋谷駅〜品川駅経由高輪ゲートウェイ駅 爆誕ッ!

 どこでもそんな情報を見たことがなかったのでびっくりしたのだが、東急バス渋43系統高輪ゲートウェイ駅〜品川駅〜新馬場駅〜大崎駅〜大鳥神社中目黒駅〜渋谷駅というバス路線が2022年11月1日(火)に運行開始するらしい。担当営業所は目黒営業所だ。

▲運行開始を知らせるチラシ

www.tokyubus.co.jp

▲公式のお知らせ

 

 渋43系統は高輪ゲートウェイ駅を発着する初めての路線バスになる。並行する第一京浜には都バスとちぃばす富士急行)が走っているが、東98でやや離れた桜田通りを走っている東急バスがしかも新系統を作って先に乗り入れることになるとは。

 

路線概要

運行頻度

 平日は朝晩(6-9時台、16-20時台)のみ、基本は渋谷駅〜高輪ゲートウェイ駅で、夜の一部入庫運用が清水行き、本数は1時間に4本程度。

 休日は9-19時台の運行で、1時間に3本程度の運行。平日と同じく基本は渋谷駅〜高輪ゲートウェイ駅で、夜の一部入庫運用が清水行きとなる。

 

transfer.navitime.biz

 

運行経路

 渋43の経路は、渋谷駅〜新馬場駅前までは渋41(渋谷駅〜大井町駅)と同じく、山の手通りを南北に結ぶ。

 渋41は新馬場駅前にある北品川二丁目交差点で第一京浜を右折して南下するが、渋43はこれを左折して第一京浜を北上する。

 新馬場駅前から品川駅までは品94と同じで、途中停留所は北品川のみである。都バスの八ツ山橋や、港区コミュニティバスちぃばすの高輪四丁目などには停車しない。

 品川駅の次はノンストップで高輪ゲートウェイ駅に着く。その間にある高輪北町や泉岳寺前など、都バスのバス停には停留所が設置されない。

停留所と乗り換え情報

 

渋43系統を便利に使う

 渋43系統が高輪ゲートウェイまで行くのは、利便性というよりも、免許を先取りして、高輪ゲートウェイが発展した時にそこに乗り入れるための免許維持路線という意味合いが大きいように思える。後に書くように、高輪〜品川間は港区の南端で住民が多く、競合する路線もバス・鉄道ともに多くある。まだ更地の高輪ゲートウェイ駅前にあえて乗り入れるのは、他社より先に路線を押さえないと、不要路線として免許が下りない可能性もあるからだろう。それゆえ、当初は高輪ゲートウェイ〜品川駅間はほとんど使われないことも考えられる。

 とはいえ、沿線住民にとっても、これまでの渋41が品川・高輪方面へと路線を延ばすことによるメリットは少なくない。

山手通り沿いに住んでいる人々にとってのメリット

 渋43のメリットは、目黒川西岸の山手通り沿いの住民が、河岸段丘を登って山手線の駅まで行かなくても品川に出られるという一点が非常に大きい。品川駅に出られれば、新幹線に乗れる。京急も普通ではなく快特に乗ることができるし、品川駅周辺のオフィスや商業施設にいけるようになる。渋41の終点大井町駅前に比べれば、品川駅の魅力は一目瞭然だ。

 

 渋43系統の主なバス停から品川駅・高輪ゲートウェイ駅までの大まかな所要時間は次の通り。

 山手通りや目黒川から山手線の駅まで歩いて行くのにどこでも10分程度かかること、あるいは一駅だけ私鉄に乗って山手線に乗り換えるコストを考えれば、中目黒や大鳥神社からでも、恵比寿駅や目黒駅に行かずに東急バスで品川に出る、という選択肢が有力になってくる。

 また、到着地が高輪ゲートウェイであることで、港区のより東側へのアクセスが容易になる。大鳥神社前からルートが近似している、同じ東急バスの東98系統と比較してみよう。同じ高輪方面でも、桜田通り沿いなら東98、第一京浜沿いなら渋43という使い分けが考えられる。

  • 運行頻度
    • 東98→平日朝ラッシュ時は1時間6本、他は1時間2-3本
    • 渋43→平日は朝晩のみ1時間4本、休日は日中1時間3本
  • 所要時間

 新馬場あたりまで南下してきても、渋43をあえて使うケースがあり得るかもしれない。新馬場駅近辺から高輪方面へ、東急バス渋43系統と都バス品93系統、京急線の三つを比較してみよう。

  • 東急バス 渋43 新馬場駅前→高輪ゲートウェイ
    • 所要時間:10分
    • 運賃:220円
    • 乗り換えなし
  • 都バス 品93 北品川二丁目→高輪警察署
    • 所要時間:15分
    • 運賃:210円
    • 乗り換えなし
  • 京急線 新馬場→泉岳寺
    • 所要時間:10分
    • 運賃:136円
    • 乗り換え:品川駅同一ホーム乗換

 品93だと品川駅高輪口から左折してざくろ坂をあがってしまうので、高輪台側に行く時はいいが、第一京浜沿いに行くには長い坂を下りなければならない。京急は便利なようだが、普通電車はほとんど品川駅止まりで乗り換えが必要、しかも泉岳寺駅にはホームから改札階に上がるエスカレーターもエレベーターもなく非常に不便だ。第一京浜沿いに行くなら、時間が合えば渋43が有力な候補になりうる。

 

高輪・三田周辺に住んでいる人々にとってのメリット

 港区の高輪や三田周辺に住んでいる人々にとっては、高輪から山手通り沿いの中目黒や大橋に一本で行けることは、案外大きなメリットとなるかもしれない。

 高輪ゲートウェイから中目黒までを例として考えてみる。

  • 東急バス 渋43
    • 所要時間:35分
    • 運賃:220円
    • 乗り換えなし階段なし、しかも始発
  • 電車 山手線・東京メトロ日比谷線
    • 所要時間:25分
    • 運賃:336円
    • 乗り換えあり、階段あり

 高輪一丁目の伊皿子坂、高輪北町あたりから、目黒川沿いの中目黒や池尻大橋に行く際、特に子連れや身体の自由が余りきかない場合など、バスの方が便利で安いということになるだろう。バスは地上から乗れるので、10分程度の所要時間の違いは帳消しになりうる。

 さらに、白金高輪から中目黒というルートも、場合によっては高輪ゲートウェイからの方がよいということになるかもしれない。

 行き先が中目黒や池尻大橋なら、これまで10分15分かけて白金高輪駅まで歩いて行っていた高輪1丁目や三田3、4丁目あたりの人々も、あえて高輪ゲートウェイ駅に行き、渋43を利用するメリットがある。惜しむらくは、そのあたりのマンションにひしめく膨大な居住者が使えるバス停が、高輪ゲートウェイ駅停留所しかないことだ。

 東急バスはこの路線を単に免許のための線にせず、いま都バスが設置している泉岳寺前と高輪北町バス停(品川・大鳥神社方面のみ)にバス停を設置し、乗客を拾った方が得である。

 第一京浜にある両停留所の南行きは都バス反96系統の御殿山・五反田方面行きしか使っていない。バス停を共用にしてもそれほど運行がバッティングすることはなく、また都バスとの共用は隣の桜田通りの東98系統でもやっており実績がある。あるいは、既存バス停の隣に作るのでもよいだろう。今後の利用状況をにらみつつではあるだろうが、利便性が向上していくことを願いたい。

 

余談

 神奈川東部方面線(相鉄・東急直通線)の開通も近い。これが開通すると、南北線三田線も新横浜・相鉄沿線まで直通する。東急としては、現在は山手線西側に展開している交通を含めた自社サービスを、港区の南側の高輪、白金地域にも広げていく魂胆があるのだろう。このバス路線は、高輪地区住民に東急の存在をより強く印象づけるためのブランド戦略の側面もあるように感じる。今後、白金高輪駅から品川駅までの東京メトロ新線も建設される。いつかは、現在東京メトロと都営の共用になっている地下鉄の白金高輪〜目黒間を東急が買収して、白金高輪以西が東急目黒線となる日が来るかもしれない(これは単に妄想である)。

 

 

 品川駅から高輪にかけてといえばこの小説。