読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

カーペンターズの朝

 やや萎えすることがあってあまりブログを書く気が起きないのだけど、午前中のるんるんだったころに書こうと思ってたことを簡単に書く。

 今朝はいい天気で、太陽は春の陽気で世界を明るく照らしつつ、風は日本海側でよく冷やされた透き通るような空気を運んでくれてて、そのマリアージュが最高だった。

 その気分にマッチする音楽として久々にかけたのは、カーペンターズ

Gold Carpenters Greatest Hits

Gold Carpenters Greatest Hits

  • アーティスト:The Carpenters
  • 発売日: 2001/11/12
  • メディア: CD
 

  いいよねぇ、木こりたち。声もいいし、シンプルなようでちょいちょいひねりをきかせた移行してくるメロディもいいし、英語の発音もいい。なのに、そのボーカルのカレンが拒食症で死んでしまうなんて。兄のリチャードも睡眠薬依存に悩まされていたという。あれだけの活躍をして、これだけの音楽的資産をたった2人で作り上げた兄妹が、しかし安息とは対極の精神状態にあったことは、なんとも名状し難いことだ。先の記事に引いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」で描かれたフレディ・マーキュリーの苦悩も同様、一般に、有名になったり活躍したりすると、みな余裕を失ってしまうものだ……。

 僕も今年、カレンの亡くなった歳と同じ年齢になる。ポルノグラフィティが「幸せについて本気出して考えてみた」で歌ったように、かつてイメージしていた自分の像とはかなり乖離があるし、睡眠薬なしで寝られるし、ご飯も適度に食べられる。ありがたいことだ。そもそも、かつてイメージしていた自分の像など思い出せない。昔の僕にあったのは、理想ではなく渇きであって、多分それは今も変わらない。このまま年老いるのはつらいものだ、どこかで悟りを開けるといいのだが。

 

幸せについて本気出して考えてみた

幸せについて本気出して考えてみた

  • 発売日: 2019/10/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

シノーポリのワーグナーが好きなわけ

 最近どうも音楽の話ばかりしているようだ。

 以前の記事で、シノーポリの振るワーグナーが好きだという話をちらっと書いた(1940年代生まれの音楽家たち - 読んだ木)。しかし、シノーポリの表現するワーグナー前奏曲は、普通に聴けばむしろまとまりのない、また縦ノリのもったりした演奏だと感じられるだろう。流れるような力強い演奏は他にいくらでもある。しかし、僕がシノーポリの曲作りを好きなのには、理由がある。

 

ワーグナー:序曲・前奏曲集

ワーグナー:序曲・前奏曲集

 

 

 僕は高校時代に吹奏楽部に所属していた時期があり、大学時代にはバロック音楽を弾いたりするサークルにいた(モーツァルト日和 - 読んだ木)が、高校時代の楽器が低音で和音の根音を担当するチューバ、大学時代の楽器が内声で第三音を弾かされるビオラだったことから、高音の主旋律以外の音ばかり聴いていた。特に内声は、そこでの旋律が主題のどのような展開であり、あるいは外声の主題展開に対してどのように呼応するものなのかを常に意識させられる。実際は意識するだけで全く弾けなかったから、意識するだけ無駄なのだが、しかし曲を聴くときにはそういう関心が惹起される。

 そうなると、交響曲の聴き方は、目立つ外声のメロディだけを追うのではなく、むしろ第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス木管金管、あるいは打楽器などとの間の掛け合いや、メロディの重なり合いに向くことになる。だから、トップのメロディラインを中心にまとまりよく仕上げた演奏より、いろいろな楽器が代わる代わる前に出て来たり、場合によっては波のように出たり入ったりするような演奏の方が、好きなのだ。

 付け加えれば、ワーグナー前奏曲が好きなのは、チューバが非常に効果的に使われているからである。検索すると、「リヒャルト・ワーグナー 音楽的創意にみるテューバの用法」なんて博士論文が出てくるほど、ワーグナーにおけるチューバの役割は大きい。「ニーベルングの指環」のために「ワーグナーチューバ」なるものが開発されたほどだ。

 

 (これめっちゃ安いけどちゃんと音鳴るのかな……)

個人的には、「マイスタージンガー」の前奏曲で、F管のチューバ(当時主流だったのはまだF管のバス・チューバだった。この曲以降は、B♭管のコントラバス・チューバが用いられるようになる)がファゴットと共に堂々奏する主題が本当にかっこよくて好きだ。シノーポリはここの高音を押しとどめ、これでもかと低音に吹かせてその魅力を遺憾なく表現している。

 チューバは高額な楽器で、高校を卒業してからは見かけることすらなく、当然ながらもう吹く機会もない。もし人生がもう一度あれば、チューバでワーグナーの曲に乗ってみたいものだ。チューバで乗ってみたいのはもう一曲ある。それはドボルザークの『新世界』だ。しかしこれについて話すのは後の機会にしよう。たしか実家にスコアがあったはずだから。もし人生がもう二度あって才能に恵まれるならば、指揮者もやってみたかったのだが、その夢は来世に託すとしよう。

 

チューバ スタンダード100曲選

チューバ スタンダード100曲選

  • 発売日: 2017/11/20
  • メディア: 楽譜
 

 

速さが変わってしまった歌

 ちょっと前の記事で、ショスタコーヴィッチの交響曲第5番の冒頭が、もとは四分音符=88のところ188という倍に近い速さで演奏されるようになったという話を書いた(雨の日のラヴェル、アメリカのラフマニノフ、道化のショスタコーヴィッチ - 読んだ木)。

 

ダンデライオン

ダンデライオン

  • 発売日: 2019/06/28
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 テンポを誤って高速で演奏するようになった曲といえば、バンプ・オブ・チキンのダンデライオンを思い出す。藤原の作った曲のノリを、確かドラムの升か誰かが勘違いしてアップテンポな曲にしてしまった、それが案外面白いのでそのまま録った、みたいな話だったと思う。個人的にはゆっくり弾いてSMAPのらいおんハートみたいな曲にしてもらった方が味があった気がしないでもないけど、まぁ初期のバンプらしいっていうかなんていうか。

 

らいおんハート

らいおんハート

  • アーティスト:SMAP
  • 発売日: 2000/08/30
  • メディア: CD
 

 

 バンプ・オブ・チキンは今も活動しているのだろうか、と思って調べたら、今は3人でやっているらしい。日本ではあまり自由恋愛みたいなのは認められてなくて、特に婚姻後はお互いが1人の相手を占有することになっているから、不倫をした人は社会的な活動をしてはいけないということで、バンプのベースの直井も不倫を理由にいま活動休止中とのことである。僕はあまり他人を占有したいとかされたいとかいう気持ちがないのでよくわからないが、世の中はそういう気持ちを強く持っている人が多いのだろう。斉藤環が承認をめぐる病とかいう本を書いていた通り、他人を占有しないと自己を保てないということかもしれない。いずれにしても、恋愛沙汰というのはあまり関わりたくないものである。

 

VOYAGER

VOYAGER

  • アーティスト:松任谷由実
  • 発売日: 1999/02/24
  • メディア: CD
 

 

 ダンデライオンといって思い浮かぶのはもう一つあって、ユーミンの歌。ボヤージャーというアルバムに入っていて、確かそれはレコードで持ってた気がする。この曲の歌なんか、まさに他者依存する話だ。「とても幸せな 淋しさを抱いて これから歩けない 私はもうあなたなしで」っていう、まぁユーミンにしか許されないであろう倒置法の文でサビが締め括られる。この歌詞は出てくる文章みんな倒置法なので、歌詞解釈を検索すると無茶な解釈がたくさん出てくる。あと、この曲が書かれたのがまだウーマンリブ華やかなりし頃だったから、女性が男性を「きみ」って呼んでいることは自然なのだが、最近の人にはそれもわからないらしい。こうして歌は曲がられてしまうんだな、テンポが変わってしまうのと同じように……などと思ってしんみりする。

 

 

 速さを変えた歌の話に戻すと、ピッチを変えるためにあえて録音した速さを変えることもある。昔はデジタルではなかったので、速さを情報上のかけ算で伸び縮みさせることはできなかった。そこで、ゆっくり吹き込んだテープを早回しすることでピッチを変えていたのだ。その代表曲が、ザ・フォーク・クルセイダーズの「帰って来たヨッパライ」である。早回しテープの録音でできたあの歌のメインボーカルの甲高い声が、フォークルのコミカルで華々しいデビューを決定づける要素だったことは言うまでもない。

 ちなみに、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」のオペラ部分も異様に高い声が入っているが、あれは映画「ボヘミアン・ラプソディ」のシーンでも出ていたように、ドラムのロジャー・テイラーが頑張ったもので、早回しではない(いい映画だったな……)。

 

ボヘミアン・ラプソディ (字幕版)

ボヘミアン・ラプソディ (字幕版)

  • 発売日: 2019/04/17
  • メディア: Prime Video
 

 

ビリー・ジョエルで好きな歌

 前の記事でビリー・ジョエルのピアノ・マンについて触れたんだけど(沈丁花 - 読んだ木)、彼の歌で好きなのは、マイ・ライフ。

 

52nd Street

52nd Street

  • アーティスト:Joel, Billy
  • 発売日: 1998/10/20
  • メディア: CD
 

 

 このブログに、その時代的な雰囲気を踏まえたすごくいい対訳があるので貼っておくね。

lyriclist.mrshll129.com

 

 なんていうのかな、自分の人生にいろいろ言ってくる人いるし、しかも善意で心配して言ってくる人いるけど、僕の人生なんだから口出すなっていうのをここまではっきり歌ってくれるとスカッとするというか。この歌詞最初に読んだ時に、親か親戚に言われてんのかと思ったけど、この訳見ると昔の友達って設定なんだね。まぁ似たようなものか。

 ビリー・ジョエルじゃないけど、同じような状況で、いや、おまえは自分の道を信じて頑張れよ、いつか田舎のママンもわかってくれるさって励ましてくれる、この歌も好き。

 

Move On Up

Move On Up

  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

ノリがたまらないよね、すごく元気出る。現実にもこんな感じでぐっと背中を押してくれる人がいたらいいのだけれど……笑

 

 話を戻して、マイ・ライフは東海岸を捨てて西海岸のロサンゼルスに行った人の話だけど、東海岸東海岸で大変だった。衰退する鉄鋼業の街で荒む若者の心を歌ったアレンタウンも味わい深い。

 

The Nylon Curtain

The Nylon Curtain

  • アーティスト:Joel, Billy
  • 発売日: 2004/02/09
  • メディア: CD
 

 

歌詞は、このブログに対訳があるのでご紹介。

neverendingmusic.blog.jp

 ここに歌われている70-80年代のアレンタウンの状況は、日本でいえば室蘭のたどったようなものだ。ここに住む人々は代々アメリカの産業発展の恩恵を享受してきた。製鉄業で栄え、歌の中にもあるように、第二次世界大戦に従軍して日本を打破し、悠々と凱旋した。しかし、当時の若者たちには、もう産業もなにも残っていなかった。街を出ていくしかなかったが、残らざるを得ないものたちには、苦しい経済状況の中を生き抜くための相応の覚悟が必要であった。

 こういう、同時代のアメリカを反映しつつ人生の不如意さを歌った歌は、ビリー自身の経験に即していたらしい。ナチスに追われてアメリカに移住したユダヤ人のもとに生まれたビリーは、中流階級だったが真面目な勉学のコースは取らず、真面目なミュージシャンの道を突き進んで、それこそピアノ・マンのようにバーでピアニストをやっていた。鳴かず飛ばずだったが、マイ・ライフの主人公と同じくロサンゼルス移住後にリリースした1973年のアルバム『ピアノ・マン』のヒットが彼を表舞台に押し出したのだった。

 

 彼もまた、1940年代生まれのミュージシャンである(1940年代生まれの音楽家たち - 読んだ木)。49年生まれだから、73年にヒットしたときはまだ若い24歳か。前の記事にも書いたかもしれないが、彼が生まれたロングアイランドは、ラフマニノフが晩年、作曲をやっていた場所でもある。

 今のパートナーと婚姻するずっと前、出会った頃にビリー・ジョエルのリサイタルが日本であって、2人で行こうかという話になったことがある。ただ、その時はなんでだったか、多分忙しかったのだろう、行かずじまいで、結局一度もビリーの歌声を生で聴いたことはない。もうさすがに、日本に来ることはないかもしれないな。1940年代生まれのアーティストの話になると、いつもこういう締めくくりになってしまう。会いたい人には会える時に会っておかねば、短い人生はあっという間に過ぎて、全て幻のままに了ってしまう。

 

ビリー・ザ・ベスト

ビリー・ザ・ベスト

 

 

雨の日のラヴェル、アメリカのラフマニノフ、道化のショスタコーヴィッチ

 雨の火曜日。これが月曜日か土曜日だったらなんだか詩的な妙味が生まれてくるが、火曜日ではどうもいけない。英語ならMonday とWednesday にrainy day が似合う。中国語だとやっぱり星期天の雨天、だろう。

 春雨や梅雨の時期には、ラヴェルピアノ曲が似合う。

ラヴェル ピアノ・ソロ作品全集
 

 ショパンだと降り方が呑気すぎていけない。東アジアに降る雨は——もちろん場所によりけりだけども——もっとファラファラファラと、風と共に絶え間ない流れのように降り注ぐものだ。ラヴェルプロコフィエフの黒い楽譜の方が、その感じによくマッチしている。僕はラヴェルの有名なバレエ曲ボレロよりも、第一次世界大戦従軍以前に書かれたピアノ曲の方がよっぽど好きだ。

 ただ、これらは僕にとってはどちらかというと梅雨に似合うイメージがより強い。

 前に、春らしい曲としてモーツァルトとかイギリスの曲とかを挙げる記事を書いた(モーツァルト日和 - 読んだ木)。ここに付け加えるものとして、春の雨の不安定さと、たまに晴れ上がって陽が差し込む感じから想起させられるのが、ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲の第18変奏だ。この狂詩曲はみんな変な曲ばっかりだが、この曲は打って変わって優雅で穏やかなメロディの部分があるので、よく単独で演奏される。

  ウィキペディアを見たら、この曲はラフマニノフロシア革命後に祖国へ帰れなくなり、アメリカに渡ってどちらかといえば作曲家ではなく演奏家として活動し10年以上を経た頃、スイスにあった別荘に行って書かれたものだという。以前の記事でラフマのピアノ協奏曲2番の録音についてちょっと書いたんだけど(1940年代生まれの音楽家たち - 読んだ木)、そこにはロシアらしい旋律、重々しい和音やオーソドックスな進行など、ラフマニノフの真骨頂である優美な味わいがある。とても春にはふさわしくない。でも、この狂詩曲にはそういった趣きは、それほど強く出ていない。この18変奏のメロディアスな部分など、なんだかイギリスの曲みたいな和音の解決の仕方に感じる。詳しくないので具体的な音楽理論ではわからないのだけど。

 ロシア革命の後、ソ連となったロシアで活動した作曲家といえば、ショスタコーヴィッチが有名だ。日本では「革命」という副題が勝手に付せられているこの曲は、確かにその副題をつけたくなるような終楽章を持っている。

 

これが演奏されたのは1937年。ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲を書いたのも、たった数年違いの1934年だ。ラフマニノフアメリカに渡ることで彼の音楽の持つ優美さを失ったとすれば、ショスタコーヴィッチはその優美さを引き継ぎながらも、それを戯画的に作り変えることを余儀なくされた。交響曲第5番は、当時それまでの楽曲を反革命というレッテルで攻撃されていたショスタコーヴィッチの、政治的な命運を分ける曲として書かれたものだったからである。四分音符=188のテンポで演奏する今日のショスタコ5番の終章4楽章冒頭は「革命」を想起させるような力強さを感じさせるが、どうやらこれは四分音符=88の誤植で、初演時はそのように演奏されたものらしい。もしそうだとすれば、むしろ社会主義国家の独裁の重々しさを感じさせるものだったかもしれない。

 

ショスタコーヴィチ (作曲家・人と作品シリーズ)

ショスタコーヴィチ (作曲家・人と作品シリーズ)

  • 作者:千葉 潤
  • 発売日: 2005/03/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 ちなみに、第一次世界大戦に従軍し、同時期に母親を亡くしたラヴェルは、1920年代に入ると冒頭に紹介したような繊細で流れるようなピアノ曲を書くことはほとんどなくなってしまった。ラヴェルが再び筆をとったのは1928年、ボレロを書いた時だが、それは彼がニューヨークに行って刺激を受けて書かれたものだった。1930年前後のアメリ東海岸ラフマニノフラヴェルもいたというのは、音楽に詳しい人なら常識なのかもしれないが、僕にとってはなんだか不思議な感じである。みんな、アメリカに染まってアメリカっぽくなってしまうという感じがある。チャップリンが『モダン・タイムス』を公開したのが1936年。もはやそこには、自然の音も香りも残っていなかったということか。ナチスの勢力拡大で、ヨーロッパでの活動拠点となっていたスイスの別荘からも逐われたラフマニノフは、アメリカ西海岸で1943年に没している。その晩年は、何がロマン派音楽を殺したのか、ということを、象徴的に表しているように思う。

 

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

 

 

沈丁花

 春と秋にいい匂いする花咲くじゃん、あれどっちも金木犀だと思ってた。

 そしたら春は沈丁花だった。全然違う。いちごはいちご農家がめっちゃ頑張れば春も秋も実がなるから、そんな感じかと思ってたんだよ。いや、いちごは関係ないけどね。

f:id:tsukikageya:20210301221442j:image

f:id:tsukikageya:20210301221451j:image

 

 今日、どうしても牛乳買わなくちゃってことで夜の9時に家を出た。久しぶりの夜の街。全然人いなかった。

 イヤホンで音楽聴いてたんだけど、久々に古い曲が聴きたくなって、キンモクセイの「二人のアカボシ」を聴いた。

 

二人のアカボシ

二人のアカボシ

  • 発売日: 2014/04/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

この歌が出た当初、大きくなったらこんなにロマンチックでアダルトな夜明けを迎えることあるのかなって思ってたけど、実際にはそういうことはなかった。

 今聴いてて、大きくなったらこんな感じに……と思わされるのは、ビリー・ジョエルの「ピアノ・マン」。バーのピアニストを主人公にした歌詞が凄くいい。昔を振り返り、堕落した現状をこんなはずじゃなかったと悔い、みんな家庭や社会への不満を並べながら、酒を呷ってひとときうつつを忘れさせてくれるピアノの音色に身を任せる。その歌を途切れさせないでくれ、とサビが盛り上がる。(ビリー・ジョエルについての記事も書きました→ビリー・ジョエルで好きな歌 - 読んだ木

 

Piano Man

Piano Man

  • アーティスト:Billy Joel
  • 発売日: 1998/10/20
  • メディア: CD
 

 

 人間、歳はとる。哲学者でもキケロに始まりショーペンハウアーボーヴォワールまで古今東西様々な人が老いを論じている。老いは限定であり、諦念なくしては受け入れられない。もちろん、その限定の中にこそ見出される新たな可能性もある。しかしそれは、その限定の外にある可能性に対する諦めを癒すものではない。全ての人は、自由な意識に対して物理的な制約を負っているが、その中でなんとか享受した自由の記憶すら再現できなくなることを甘受させられるのが老いの現実だ。限定された自己を全く新たな自己と捉えて、それまでの自己を切り離して生きていくことでしか、老いにおける自由を楽しむことはできない。それをできなければ、もちろんそれをし難いのが人情であって、「ピアノ・マン」の登場人物のようになるわけだ。

 

老年について (岩波文庫)

老年について (岩波文庫)

  • 作者:キケロー
  • 発売日: 2004/01/16
  • メディア: 文庫
 

 

 花の色は移りにけりないたづらに、わが身世にふるながめせしまに。小野小町が老いてゆく自らを憐れんで歌った歌である。

 しかし花は繰り返し咲くものだ。秋には金木犀、春には沈丁花。自分も老いて枯れていく中で、しかし毎年同じように咲かせられる花があるだろうか。そういったものを身につけることこそ、仕えるべき「事柄」(ザッヘ)を見出すということなのかもしれない。

 

 

石丸電気のレコードのビニール袋

 今日、石丸の昔のビニール袋見つけたんだよね! 以前の記事(ケンプの弾くベートーヴェンの「皇帝」 - 読んだ木)で書いた、秋葉原のレコード館のやつだと思うんだけど。

 表はこんな感じ。

f:id:tsukikageya:20210228222948j:image

 細かく見ていくと……

f:id:tsukikageya:20210228223017j:image

ショパンベーム

f:id:tsukikageya:20210228223314j:image

ベートーベン、バッハ、チャイコフスキー

f:id:tsukikageya:20210228223359j:image

ワルターブラームスシューベルトポリーニ

f:id:tsukikageya:20210228223518j:image

フルトベングラーモーツァルトバーンスタインカラヤンワーグナー

 

 まじでイカすなーと思って裏を見ると、裏はジャンルが違います。

f:id:tsukikageya:20210228223700j:image

 ナウでヤングな感じですわ。

f:id:tsukikageya:20210228223729j:image

マイルス・デイヴィス、オリビアニュートンジョン、オスカー・ピーターソンイヴ・モンタン

f:id:tsukikageya:20210228223904j:image

ザ・ビートルズの4人、ボブ・ディランキース・ジャレット

f:id:tsukikageya:20210228224441j:image

エルヴィス・プレスリーナベサダルイ・アームストロングジョン・コルトレーン

f:id:tsukikageya:20210228224601j:image

ジョージ・ベンソンロッド・スチュワート

f:id:tsukikageya:20210228224646j:image

 当時石丸は新潟にもあったらしいです。なんか茨城の筑波にもあったよね? っていうか、「国電秋葉原」って書いてあるし。E電以前、つまり1987年以前ってことよね。年代もののビニール袋だ。。。

 グーグル先生で色々調べたら、このイラストは和田誠さんが書いたものなんだそうだ。

Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集

Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集

  • 作者:和田 誠
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: 単行本
 

  えー結構いろんなところで見かけてるくない? と思ったら村上春樹の文庫の表紙のデザインとかしているのだった。そりゃあ見かけるわけだ(1Q84までは全部持ってる)。

 

 

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

 

  レコードの時代って、音楽自体もそうなんだけど、前に書いた鈴木英人とか、イラストもすごいんだよね。盤が大きくて、絵が大きいから。

 

 今だと、みんなパソコンとかで見るからミュージック・ビデオがすごいよね。音楽だけでなくMVと合わせてさらにコンテンツが強化されてる。サカナクションとかカラオケ専用のMVとかあったし。

新宝島

新宝島

  • 発売日: 2015/09/30
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 Youtubeかなんかに上がってた、パスピエの曲に誰かが勝手に映像をつけたMODも好きだったな。チャイナタウンとか。

 

チャイナタウン

チャイナタウン

  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 倉橋ヨエコが好きになったのも、ニコニコで東方MODでヨエコの歌が色々紹介されてたからだし、やっぱり21世紀は映像の世紀だ(個人の感想です)。

 

今日も雨

今日も雨

  • 発売日: 2013/03/25
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 あーカラオケ行きたいな。もろもろの意味で自由にカラオケ行けるように早くなってほしいな。