読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、3人の子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

本に関すること

宮﨑駿「君たちはどう生きるか」感想殴り書き

「君たちはどう生きるか」を観てきた 観た後なのでネタバレ有り。 「君たちはどう生きるか」はどんな感じか三文で 吉野源三郎『君たちはどう生きるか』との関係 2回の感情の描写 うめくさ 君たちはどう生きるか (岩波文庫) 作者:吉野 源三郎 岩波書店 Amazon…

坂口ふみ『〈個〉の誕生』読みながらメモ

〈個〉の誕生: キリスト教教理をつくった人びと (岩波現代文庫 学術 460) 作者:坂口 ふみ 岩波書店 Amazon 坂口ふみ『〈個〉の誕生』が岩波現代文庫になったので発売当日に買った。読みたかったんだけど文庫じゃないと持ち歩けず、持ち歩けないと読む暇ない…

投稿のすゝめ 人文系査読雑誌に掲載されるために

不採用の十や二十、貰ったってどうということはない 人文系の査読とはどういうものなのか。どうしたら通るのか。これは、人文系に進んだ大学院生や若手研究者から受けるものの中で、最も頻度の高い質問だ。それだけ皆、論文を投稿したいと思い、またそれをし…

香江『神探福邇』很有意思(香港の『神探福邇』が面白い)

『辮髪のシャーロック・ホームズ』表紙(ただしこの絵はイメージと異なり過ぎる) 五月病である。仕事をする気が起きず、神保町でコーヒーを飲んだり本屋を覗いたりして過ごしていたら、面白そうな本があって手に取った。『辮髪のシャーロック・ホームズ 神…

大正期の現代思想入門——中沢臨川・生田長江『近代思想十六講』(1915)と桑木厳翼『現代思潮十講』(1913)

東京のインコはメシのネタに飛びつく 大正期の「現代思想」の受容 大正期もブームだったフランス思想 中沢臨川・生田長江『近代思想十六講』(1915) 内容の偏倚が表す時代性 ドイツ思想を重視するアカデミックな思想史入門 桑木厳翼『現代思潮十講』(1913…

「〜的」の用法に悩む

中華的カフェか、中華風カフェか、それとも…… 「〜ティック」が「〜てき」に 「〜的」の語源と用法 なぜ「〜的」が使われるのか 「〜的」という表現は、特に研究者が好んで使う語法だが、これの意味が案外よくわからない。最近中国語を勉強するに至って、中…

哲学入門書としてはアリストテレス『形而上学』を読むべきであった

puf(Les Presses universitaires de France)版差異と反復 僕にとっての哲学入門書 哲学入門にはアリストテレス『形而上学』がよい 近代の哲学について考える場合 社会と哲学 僕にとっての哲学入門書 ごくごく個人的な回想になるが、僕にとっての最初の哲学入…

公共図書館と地域史資料

埼玉県本庄市立図書館リニューアル時の写真(2017年) 郷土資料の石川三四郎蔵書が有名 公共図書館の三つの役割 地方自治体の公共図書館における地域史資料の保管 横浜市立図書館と神奈川県立図書館 地域史資料の研究 公共図書館の三つの役割 昔、ちょっとし…

影響されやすい

もう村上春樹なんて読みたくない 僕はどうも色々なものに影響されすぎる。だから映画を観ない、というほどだ。酒の飲み過ぎで二日酔いになるならまだ翌日が辛いだけだが、ちょっと心にくる映画でも見ようものなら一週間はその余韻を引きずって、仕事や生活に…

雑感——日々の自分の仕事に対する

校正を待っているゲラ、その手前に脱稿前のチェックを待っている原稿、その下に報告用に短縮されなければいけない原稿、その横に英訳を待つ日本語原稿、それを取り巻く論文化されるのを待っているたくさんの資料、先行研究、紙切れの束……これらのものたちが…

劉慈欣『三体』三部作、ここがすごい

『三体』全三部日本語訳は全5巻 『三体』を読むまで 『三体』三部作の凄さを一言で(ネタバレなし) 各パートの面白さ(ネタバレあり) 『三体』(第一部) 『暗黒森林』(第二部) 『死神永生』(第三部) いずれにしても、一読の必要あり (おまけ)『三体…

ヘーゲル『精神現象学』の訳書比較

最近、熊野訳『精神現象学』を読んでいる 熊野訳は読みやすく、訳出が比較的的確 熊野訳で難儀していること どの訳書を読むべきか、用途や立場に合わせて選ぶ 熊野純彦訳『精神現象学』筑摩書房、2019年 樫山欽四郎訳『精神現象学』平凡社、1997年 牧野紀之…

「はたらけど…」の一首に石川啄木のストイックさをみる

エレベータには鏡がついている。これは、主に車椅子利用者のための配慮だ。ウォークスルー型の、つまり両面に扉がついている形のエレベータでない場合、車椅子利用者が前進でかごに乗車した場合、出るときは後進になる。そのため、鏡をつけて後ろが見られる…

渋谷が廃墟になる日

渋谷に久々に行ったが、随分と変わったものだ。夜でも人は少なく、ネオンだけが燦々と輝いている。昔は目新しかったこのごちゃごちゃした広告も、中国の大都市の様子を散々ネットで目にした後では、むしろ空の広さが目立ち、侘しい感じがする。 このまま高齢…

ブログ名「読んだ木」について

スコットランドのスカイ島に生えていたいい感じの木 前の記事(なぜnoteではなくはてななのか - 読んだ木)で触れた通り、僕はこれまでなんどもブログを作ってきた。しかし、毎回どのようなブログ名をつけるか悩む。というのも、いずれのブログも大したテー…

JR上野駅公園口

東京駅丸の内口の行幸通りを彷彿とさせるような、真っ白で広い遊歩道が改札から続いている。改札前の道路は左右に分断され、横断歩道は廃止された。ここは新しいJR上野駅公園口。春の日差しが芽吹き始めた木々をやわらかく照らしている。改札を出た人は自然…

梅、桜、山吹——春の花を詠んだ歌

東京は、桜が咲き始めた。 咲き始めだが、結構勢いよく咲いている。今週は晴天が続くから、三分くらいまで咲いていくかもしれない。 春は嫌いだと散々言っているが、今年はコロナで普段からマスクをするようになったおかげか、花粉症の症状が軽くて助かって…

福音館の科学の絵本

寝室にベランダの出入口があるために、夕方子供が寝ていたりすると、洗濯物を取り込むことができない。そうすると、夕飯の準備やら何やらで時間が過ぎて、寒風吹きすさぶ夜中に洗濯を取り込むことになる。しかし、いいことも多少あって、それは星空を見上げ…

高千穂鉄道と推理小説

鉄道ファン 2001年1月号 メディア: 雑誌 実家に置いてあった、僕が昔読んでいた鉄道雑誌を、子供が引っ張り出してきて読んでいる。20年以上前の鉄道の様子を振り返ることができて、親も懐かしい。 どういう経緯でそうなったのかよくわからないが、子供の気…

料理エッセイ本あれこれ

これも昔、インスタグラムで書いたことがあるんだけど、僕の好きな三大料理エッセイ本は、一つ目が米原万里『旅行者の朝食』、二つ目が桐島洋子の『聡明な女は料理がうまい』になる予定(まだ読んだことがない)で、三つ目が玉村豊男『料理の四面体』である…

グレーバーの「根本的他性、あるいは「現実」について」とオンラインについて

思想 2020年 10 月号 [雑誌] 発売日: 2020/09/28 メディア: 雑誌 (これは2020年10月1日にフェイスブックに投稿したやつ。) 岩波の『思想』10月号に掲載されていたグレーバーの「根本的他性、あるいは「現実」について」を読んだ。他性を、自らとは別の存在…

逃げ恥の新春スペシャルがすごく嫌いだった話

文學界(2021年1月号) 発売日: 2020/12/07 メディア: 雑誌 (これは1月3日にフェイスブックに投稿したやつ。フェイスブックにあると流れてっちゃうのでブログに移した) ハンガリーの諺をモチーフにしたドラマ、いわゆる逃げ恥の新春スペシャルドラマをネット…

子供ができたら買う本三冊 おまけで読む本二冊

毛利子来は保育小児医学の専門家で『現代日本小児保健史』など著作多数 いつの間にか、僕には子供が3人いる。子供たちを曲がりなりにも楽しく育てられているのは、客観的で正しい情報と、有益な助言に従っているからだ。義務教育で教えてもらえるひらがなや…