読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、3人の子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

雑感(2022.7.8)

 安倍元首相が狙撃され死んだとの情報。原敬刺殺から1930年代のさまざまな首相暗殺(未遂)事件を散々講義したり研究したりしてきた身としては、歴史が蘇ってきたような気がする。この事件が今後、歴史的なトピックになるのは間違いない。そしてそれが、30年前後の井上財政や高橋財政の話と同じく、アベノミクスを背景とした云々と説明されることも、大体間違いなかろう。そして、そのような説明がいかに現実を一面的にしか切り取っていないものなのか、ということも、いま痛感するところである。

 民主主義だから暴力はいけない、のではない。民主主義がうまくいかない時、暴力が生まれるのである。バブル崩壊を食い止められなかった政治に対して、サリン事件が起きた。その後の30年弱、国が個人の代わりに借金をしてうまく回っていたが、徐々にそこからあぶれる人が出てきて、その仕組みが破綻しつつあった。そして、その仕組みを変えなければならないが、愚衆政と化した民主主義ではそれをいささかも変えられなかった。今日の事件は、その末の暴力だということではないか。だから、暴力を生まない民主主義にならなければいけない、ということだ。インテリしか参加できない熟議など最も悪い発想だ。誰も排除しない民主主義、あらゆる人に開かれた、生きた民主主義を改めて呼び起こさなければならない。それは歌の民主主義であり、拳の民主主義、酒の民主主義であり、踊りの民主主義、性交の民主主義、生活の民主主義である。誰かと「共に」何かをする、それを自覚しながら行う、これが民主主義の基礎であり、主人の指示で何かをする主義と根本的に異なる点である。

 とにかくこんなことを考えていたら仕事にならない。今の雑感をここに乱文で書きつけて、あとは仕事に戻る。