読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

チック・コリアの「スペイン」いろいろ

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 チック・コリアについてはこれまでの記事でもちょくちょく話題にしてきた。(例えば1940年代生まれの音楽家たち - 読んだ木。この記事は、チック・コリアの亡くなる前後に書いたものだった。)

 しかし、考えてみればまだ曲について書いたことはあまりなかったかもしれない。「男子高校生の演奏 - 読んだ木」で触れた通り、僕がチック・コリアを好きになったのは高校生の吹奏楽部で「スペイン」を演奏したからだったが、その楽譜は熱帯JAZZのもので、オリジナルのものとはかなり違うものでもあった。そんな「スペイン」の様々な演奏が、最近はApple Musicで聴き比べることができる。大変便利な時代だ。

 僕自身は、音楽については素人だから、別にレビューとかそういうことができるわけではないが、当時の郷愁もあるので、誰かに読んでもらいたいということではなく自分のために、いろいろな「スペイン」の演奏についてメモ程度にまとめておこうと思う。

(見出しの括弧内は録音年→リリース年) 

 

 

チック・コリア演奏録音

「スペイン」オリジナル録音(1972→1973) 

Light As a Feather
・普通のCD→Light As a Feather
・別テイクの入った2枚組CD→ライト・アズ・ア・フェザー (完全盤)
 ・SMH、UHQ、MP3など→ライト・アズ・ア・フェザー
Amazon Musicスペイン

 

 「スペイン」という曲の最もよく知られているスタンダードな演奏は、このライト・アズ・ア・フェザー "light as a feather"というアルバムに収められたものだ。1972年録音、73年リリース。冒頭、チックが電子ピアノで奏でるアランフェス協奏曲の第2楽章の、テレレ〜 テレレーレレーレ テレレ〜という哀愁ただようイントロが特徴的。

 ただ、後述するチックの様々な演奏、あるいはアレンジの多様さと比較すれば、演奏の味わいはあっさりしているし、曲の性格としても、冒頭にアランフェス協奏曲が引用されている他はそれほどスペイン風の曲調が再現されているわけではないし、チック・コリアのプレイが前面に出ているわけではないから、後世の人間が聴いてもそれほどインパクトを受けないかもしれない。ただ、歴史的にはやはり当時大きな影響があったのであって、全ての出発点としてこの録音があるのだ。

 

「スペイン」アナザーテイク(1972→1998)

ライト・アズ・ア・フェザー (完全盤)


・アナザーテイクの入った2枚組CD→ライト・アズ・ア・フェザー (完全盤)
Amazon Musicスペイン(別テイク)


 これはアナザーテイクということで、1998年に出たリマスター盤のボーナスディスクに収められたもの。上述の採用テイクより若干テンポが早いのが魅力。ただフルートが前者よりも力無い感じで、そこがイマイチかな。そのせいでテンポが早めにも関わらず全体的に乗り切れてない感じを受ける。 

 

チック・コリア・アコースティック・バンド版「スペイン」(1989→1989)

Akoustic Band
CD→Akoustic Band Standards and More
LP(中古品だがLPが売っている!2022/4/25時点)→Akoustic Band [Analog]

 

 ピアノ・ソロ版「スペイン」に対して、ソロではないんだけど、チック・コリア・アコースティック・バンドの有名な演奏が、チックのピアノが前面に出たバージョンの「スペイン」としてよく知られていると思う。チックのピアノを楽しみつつ「スペイン」を聴くなら、ソロよりもこれだと思う。

 このバンドは写真の通り、ジョン・パティトゥッチというベーシストと、デイヴ・ウェックルというフュージョン系のドラマーとの比較的若い3人のトリオで、フルートやサックスが入っていないこともあり、おしゃれで耳障りのいい演奏に仕上がっている。とはいえ、それはあくまでチック好きの立場からの感想で、実際はチックのめちゃめちゃ手数の多い演奏がバンドとうまく調和してるというもの。ムーディなBGMになるジャズナンバーとはわけが違う。
 これは僕は、「スペイン」の様々な録音の中で最もチック・コリアの良さというか、らしさがうまく出ている録音だと思う。しかし惜しむらくは、なぜかApple Musicに入っていないのである! 大変残念なことだ。

 

ソロプレイ「スペイン」(?→2008)

 

Chick Corea - Very Best Of Jazz: Thelonious Monk(2CD)

CD(新品)→Chick Corea - Very Best Of Jazz: Thelonious Monk(2CD)
CD(中古)→The Very Best Of Jazz - Chick Corea
Amazon MusicSpain (Live)


 チックがソロで「スペイン」を演奏する録音が入ったCDはいくつかあったと思うのだけど、これは2枚組CDのチック・コリアベスト盤で、ちょっと僕の検索能力だといつ録音されたものかとかはわからなかった。結構狭い箱でのライブで、ピアノソロで軽めに弾いているものだ。そのために時間も4分足らずと非常に短い。もうちょっとしっかりしたピアノ・ソロの「スペイン」の録音もあるはずなのだが、Apple Music上では見つけられなかった。

 

チック・コリア・トリオ版「スペイン」(2013→2013)

 

Trilogy

CD→Trilogy

CD、MP3、Amazon Musicなど→Trilogy by Chick Corea Trio

SHM-CDトリロジー (SHM-CD)


 これは、「Trilogy」というアルバムに収められた演奏で、2013年というかなり最近のライブ録音である。この演奏の魅力は、逆説的だがチックがあんまり弾いていないところだ。なんといってもニーニョ・ホセレのフラメンコギターとクリスチャン・マクブライドウッドベースの絡みが最高である。この二人が慎み深くスペイン風に「スペイン」の進行をたどっていく流れを邪魔せずに、チックが音を置いていく、それがまたムーディな雰囲気を醸している。ホルヘ・パルドのフルートがオリジナルのジョー・ファレルの演奏を想起させつつも、より情熱的なタンギングと丁寧なトリルで曲を盛り上げている。

 これは、のちに触れるパコ・デ・ルシア沖仁がほぼソロで奏でる「スペイン」とは異なり、フラメンコギターが中心となる「スペイン」ではあるがトリオだ、という点で特徴がある。チックが入っていることもあり、原曲が尊重され、フラメンコ風にアレンジするあまりリズムが崩れて三連符になるようなことがないことも、原曲好きの聴き手にとっては嬉しいところ。

 

カバー:ジャズ系

 ここからはカバー曲を扱っていこう。まずはジャズ系のアレンジから。

熱帯JAZZ楽団演奏「スペイン」(2003→2011) 

熱帯JAZZ楽団 XV~The CoversII~
アルバム(CD、MP3、Amazon Music)→熱帯JAZZ楽団 XV~The CoversII~
Amazon Music(単曲)→スペイン


 2003年の熱帯JAZZの7枚目のCDに収録された「スペイン」の「熱帯」アレンジで、Apple Musicに入ってるのはこっちのThe Covers 2に再録されたもの。中身は一緒のはず。熱帯アレンジというだけあって、コンガのポコポコいう音に乗せて重厚な金管バンドの音がまっすぐ飛んでくる熱い一曲だ。そういうアレンジの性質上、吹奏楽の楽譜になって高校生バンドなどによって演奏されている。その楽器編成もさることながら、冒頭を「スペイン」の主題にして、もともと冒頭にあったアランフェス協奏曲2楽章のフレーズが曲の中盤の転換部にどてっと突っ込まれている、これがすごくインパクトあるんだよね。
 雰囲気としては、ウェストサイド・ストーリー・メドレーみたいな感じ。ウェストサイド・ストーリーでいうウェストサイドっていうのは、アメリカ西海岸のことではなくニューヨークの地名で、東京で言えば「西川口物語」みたいな感じなのかな。それだとウェストリバーサイド・ストーリーになりそうだけど。まぁそれはいいとして、ウェストサイド・ストーリーは確かにニューヨークの話でニューヨークで上演されるけど、あれ物語の主要な登場人物がプエルトリコ人なんだよね。プエルトリコはもともとスペインの植民地で、20世紀にアメリカの管理下に移るんだけど、今でも自治領みたいな扱いで、スペイン風の文化が根付いている。それを反映した音楽になっているから、あれもスペイン風かつ熱帯っぽい雰囲気のある曲なのよね。だから熱帯JAZZ版「スペイン」が「ウェストサイド・ストーリー」風に聴こえるのも、多少は由縁のあることだと思う。

 

マンハッタン・ジャズ・クインテット演奏「スペイン」(2007→2008)

スペイン
CD、Amazon Musicスペイン
Amazon Music(単曲)→SPAIN


 マンハッタン・ジャズ・クインテットが演奏する「スペイン」。オープニングが時代劇みたい、といったらちょっと語弊があるかもしれないが、ミュートしたトランペットの高音のロングトーンから始まる独特のもの。中身の編曲はビッグバンドに最適化されたシンフォニックなもので、編曲家デイヴィッド・マシューズの面目躍如といったところだ。ただまぁ、チックではあり得ないタイミングでのメジャーへの進行とかあるので、ビッグバンドのアレンジとしてはいけてるけど、原曲好きな人には受け入れられないかも。吹奏楽やってた人なら、パートをばらしてそれぞれに受け持たせるこのアレンジは好きだと思う。

 

マンハッタン・ジャズ・クインテット演奏「スペイン」(?→2014)

Special Edition of Mjq-The 30th Anniversary by Manhattan Jazz Quintet (2014-10-08)

中古CD→Special Edition of Mjq-The 30th Anniversary by Manhattan Jazz Quintet (2014-10-08)


 トランペットが前面に出ている「スペイン」と言えばこれ。原曲のフルートの代わりをトランペットがやり、合いの手をサックスが入れるという形だ。前のMJQの編曲よりシンプルな編成。冒頭、アランフェス協奏曲のテーマをトランペットソロで吹くのは、まさに「必殺仕事人」のテーマそのものであり、時代劇を想起する人も多かろう(ただしあそこでトランペットのアランフェス協奏曲が使われている元ネタは多分マイルス・デイヴィスのアレンジだろう:「スケッチ・オブ・スペイン+3」)。なお、高校の部活の同期にしか通じない話ではあるが、高校2年生の定期演奏会第3部で「スペイン」をやる前に第2部で上演した音楽劇の中で、まさにそのトランペットソロがSEとして吹かれているので、あのとき期せずしてアランフェス協奏曲のバリエーションが2回演奏されたということになる。

 トランペット好きの人には一番楽しめる「スペイン」かもしれないけど、僕なんかはこれを聴くと、だからトランペットは鬱陶しいんだよな……って思っちゃうぐらいペットの主張が強い。それに合いの手を入れるサックスも本当になんていうか、自己主張が激しくて、曲全体としてはつっけんどんな印象を受ける。
 ただこれはもう、「スペイン」っぽさもチック・コリア感もないから、違う曲として聴けばそれなりに聴きごたえはある。なんか知らないけどドラムがオープンハイハットの付け根のところをずっとツンツクツクツクツンツクツクツクやっていて、「A列車で行こう」よりも列車みがある。言うなれば Spain ならぬ Austin で、テキサス・イーグル号でロサンゼルスからオースティンを経由してシカゴに行く長距離列車が砂漠地帯を駆け抜ける様を描いた曲、と説明された方がよっぽどしっくりくる。ロスからオースティンまではスペイン語の駅名も多いしね(そういう問題ではない)。

 

渡辺香津美 feat. 小曽根真 デュオ演奏「スペイン」(?→2016)

 

 

ベスト・オブ・domoイヤーズ
CD、MP3、Amazon Musicベスト・オブ・domoイヤーズ
Amazon Music(単曲)→スペイン [feat. 小曽根 真]


 フラメンコアレンジのギター版「スペイン」は数多くあれど、ジャズギター版「スペイン」はあまりない(多分)。その意味で貴重な録音なんじゃないか。渡辺香津美のギター演奏によるスペインは普通にかっこいいので、特に説明不要だろうが、面白いのは小曽根真がかなりチック・コリアの弾き方に忠実に演っているところ。そのおかげで、「スペイン」感はばっちり出ている。元のを聴いてないからわかんないんだけど、1998年のアルバム『ダンディズム』収録の録音なのかな。

 渡辺香津美の弾くスペインはこのほかにギターソロ、ストリングスとの共演もあるのだけれど、どちらも単に「スペイン」のインストアレンジ(元々インストだけど)って感じで、正直あまりそそられない。後述する沖仁とやったやつと小曽根真とやったこれだけは、「スペイン」として聴けるかな、と思う。ほかは渡辺香津美を聴きたい人のための「スペイン」かな、と。

 

カバー:フラメンコ系

パコ・デ・ルシアジョン・マクラフリンのギターデュオ演奏「スペイン」(1987→2016)

 

PACO & JOHN LIVE AT

LP(レコード盤!新品であるゾ!)→Paco and John Live at Montreux [Analog]
CD、MP3、Amazon MusicPACO & JOHN LIVE AT Montreux
※レビューにはDVDのレビューが書かれているが、DVD付きのものが売られている時といない時がある。購入時要チェック。
ライブDVD→PACO & JOHN-LIVE AT Montreux

 

 フラメンコ風の「スペイン」、というと語弊がある、フラメンコギターで表現しうる最高の「スペイン」、といえばこの録音だ。

 二人とも、ジャズもフラメンコも存分に演奏できるテクニックを持っている稀代のギタリストだ。「スペイン」という曲はまさにその二つを架橋するうってつけの存在である。さて、フラメンコはジャズと異なりカンテ(歌)やバイレ(踊り)が中核となる音楽である。しかも、パルマと呼ばれる手拍子や、サパテアードというタップダンスのような足鳴らし、パリージョというカスタネットのような打楽器などを用いて、かなり鋭くリズムを刻む。そのようなフラメンコの趣向が反映された「スペイン」は自ずと、観客を巻き込むようなはっきりとしたリズム感が表現されることになる。後述の通り、それは場合によっては「スペイン」の独自の細かいリズムを崩してフラメンコのノリに寄せていく結果になりかねない。しかしこの二人の演奏は、ジャズであることをも崩さない。よって、神業的なギター演奏によりその独自のリズムをさらに切れ味鋭く刻むことになるのだ。

 ライブDVDも評価が高いが、僕はまだ見る機会がない。そのうち入手して見てみたいと思う。

 

ミシェル・カミロ&トマティート演奏「スペイン」(2000?→2000) 

Spain

CD、MP3、Amazon Musicスペイン

 

 こちらはピアニストのミシェル・カミロとフラメンコ・ギタリストのトマティートの共演。ジャズに入れるかフラメンコに入れるか悩んだ。カミロはジャズ調に、トマティートはフラメンコ調に弾こうとしているので……ただまぁ、主役はトマティートであるはずだろうと思ってフラメンコの方へ。トマティートのギターは♪♬(8分音符+16分音符二つ)のリズムを8分三連符に崩してしまうのだが(チックもたまにやる)、それが情緒的な雰囲気を醸し出している。ピアノはかなりジャズ調に弾いているためにややトマティートとの齟齬があるが、音質のミクスチャが心地よいし、トマティートのソロではフラメンコギターの雰囲気を存分に楽しめる。

 

沖仁演奏「スペイン」バンドバージョン(?→2018)

Spain

CD、MP3、Amazon MusicSpain
Amazon Music(単曲)→Spain (Band Version)


 沖仁のギター演奏は日本刀のような切れ味がある。じゃあ、お前は日本刀でなんか切ったことがあるのか?と言われればそれはないのだが、言い直せば、沖仁の演奏は強い抑揚がなくリズムが正確無比、それでいて特に高音域の弦の音が鋭く、聴く人をドキドキさせる。これを比して日本刀、というわけだ。

 バンドアレンジなのでピアノとベースも入っているが、フラメンコらしくメインのリズムはパルマで取り、シャカシャカという音は多分シェイカーだと思うのだがそれにしてはリズムが細かい、雰囲気たっぷりだ。また、中盤にアランフェス協奏曲のテーマを入れてさらに盛り上げている。

 

沖仁 con 渡辺香津美「スペイン」(?→2015) 

エン・ビーボ!〜狂熱のライブ〜
CD、MP3、Amazon Musicエン・ビーボ!〜狂熱のライブ〜
Amazon Music(単曲)→スペイン

 

 フラメンコギターの沖仁エレキギター渡辺香津美のコンビで演奏する「スペイン」。小曽根との共演の時は、バブル期のフュージョンのような気障さが色濃く出ていた渡辺の演奏も、沖仁との共演ではむしろ沖のフラメンコの哀愁と情熱の漂う雰囲気を盛り上げる役割を担う。沖のギターも、バンドとやった時とは異なり、自由にのびのびと盛り上がったストロークで情熱を感じさせる。

 沖仁だからフラメンコ系に括ってしまったが、これはフラメンコとジャズとフュージョンの合間にあるような録音で、いずれとも言い難い。その意味では、曲の向かう方向が常に問い直されながら進行する、緊張感ある演奏であるとも言える。最終盤ではロック調の展開もあり、聴く者の息をつかせない。

 

元ネタ:アランフェス協奏曲

 さて、ここまで聴いた皆さんには(聴いてなくても)、改めてオリジナルのアランフェス協奏曲、ホアキン・ロドリーゴがスペインはマドリードの南にある都市アランフエスをモチーフに1939年に作曲されたそれを聴いてもらいたいものだ。

 

ジョン・ウィリアムズバレンボイム指揮イギリス室内管弦楽団

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲 他(ステレオ&マルチチャンネル)

 ジョン・ウィリアムズの演奏(映画音楽の人とは別)、オケはバレンボイム指揮のイギリス室内管弦楽団という正統派。(CD、MP3、Amazon Music)→ロドリーゴ:アランフェス協奏曲 他(ステレオ&マルチチャンネル)

ジョン・ウィリアムズフィラデルフィアオーケストラ

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲/カステルヌオーヴォ=テデスコ:ギター協奏曲 ほか

 これもジョン・ウィリアムズ。オケがフィラデルフィア管弦楽団でお手本のような演奏(CD)→ロドリーゴ:アランフェス協奏曲/カステルヌオーヴォ=テデスコ:ギター協奏曲 ほか

バルエコとドミンゴ

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲、ある貴紳のための幻想曲 他

 俗にバルエコ奏法と呼ばれる、アポヤンドせず端正かつ自然な現代的奏法を打ち立てたことで知られるバルエコと、言わずと知れたテノール歌手プラシド・ドミンゴがタッグを組む一枚(CD)→ロドリーゴ:アランフェス協奏曲、ある貴紳のための幻想曲 他

作曲のきっかけとなったペペ・ロメロ

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲

 アランフェス協奏曲はギタリストのセレドニオ・ロメロがロドリーゴに息子たちと協奏できる曲の作曲を頼んだことがきっかけで生まれた、その次男ペペ・ロメロの演奏。解釈が異なり好みは分かれるが、本来はこれが正しい解釈かもしれない(CD)→ロドリーゴ:アランフェス協奏曲

 

曲の雰囲気

 なんかApple musicに入ってるものとamazonのリンクがマッチしないんだよな。まぁ録音の取捨はさておき、これを聴くと意外な印象に打たれる。というのも、第一楽章と第三楽章はオーソドックな古典音楽風であり、僕のような素人が聴くと、後期バロックリュート音楽と言われればそんな気がしてくるぐらいである。第二楽章だけが敢えて聴けばスペイン風だが、そもそもバロック音楽組曲にもスペイン風の楽章というのは入っているのであって、これをもってスペインというわけにはなかなかいかない。

 ただ、この第二楽章は切り出されてギターの音楽、あるいはジャズアレンジされてスペイン風の音楽として非常に有名になった。それで、アランフェス協奏曲の第二楽章=スペイン風のギター音楽の代表となったわけだ。そこからチックはさらに主題を切り出して「スペイン」という曲を作ったのである。

 そこで思うのだが、今までジャズ風、フラメンコ風のアレンジの「スペイン」を聴いてきた。そこにはさらにフュージョンやロックの可能性もあった。しかしむしろ、リュートクラシックギターによるアンサンブルやオーケストラアレンジのクラシック風「スペイン」があってもいいのではないか。だれかそういう編曲で書いて演奏してくれないかな。

 

* * *

 

そのようなわけで、まだまだ新しい解釈や演奏の余地が多分にある「スペイン」の魅力、最初は、メモ程度に……と思っていたらずいぶん長くなってしまった。それぞれの録音について詳しくはまたいろんな人が書いているので、そちらもぜひ参照されたし。