読んだ木

研究の余録として、昔の本のこと、音楽のこと、3人の子育てのこと、鉄道のことなどについて書きます。

新型コロナワクチン(モデルナ)接種と副反応

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2回目は副反応で39度近い発熱

 ワクチン二回接種が完了した。接種したのは、日本で一般にモデルナと呼ばれている武田/モデルナのワクチンだ(武田/モデルナ社の新型コロナワクチンについて|厚生労働省)。この記事はその経過をまとめたもの、まぁいわば体験談である。なお、三回目はこちら→「モデルナ3回目の副反応メモ - 読んだ木

 

接種予約

 自治体接種と職域接種の案内が同タイミングでやってきた。家事と子守りの必要を考え、妻と僕とで接種タイミングを1週間ずらした。また、本当は打つワクチンの種別も変えたかったのだが、日程的にモデルナの方が早く打てたので、夫婦ともにモデルナを打つことにした。

 1回目のタイミングを1週間ずらしても、遅く打つ方がファイザーだと2回目接種のタイミングが被ってしまうので注意したい。モデルナは4週間(28日)、ファイザーは3週間(20日)の間隔を空けての接種である。基本的には、どこで予約しても2回目の予約はその間隔+7日のうちには必ず取れるようになっているので、1回目のスケジュールを立てた時点で2回目接種の日程も1週間の幅をもって確定することができる。

 一部の自治体では運営がうまくいかず、2回目接種が急にキャンセルされたりするなど混乱が生じている。しかし、6週目までに打てれば、その接種タイミングが遅れたからといってワクチンの持つ発症予防効果がなくなるわけではないことが証明されている(ファイザー社のワクチンは、通常、1回目から3週間後に2回目を接種することになっていますが、どのくらいずれても大丈夫ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省)。ただ効果はそれなりに下がるので(ファイザー製の海外臨床試験では全体95%→遅れグループ73%)、感染予防には特に引き続き注意する必要がある(第44回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 資料【資料3】ファイザー社の新型コロナワクチンの接種間隔について)。

 さらに、接種間隔を12週間まで開くと予防効果が高まるというイギリスの研究結果もある(ファイザー製2回目接種、遅らせる方が有利か 抗体3倍に 英研究|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)。それゆえ、どれだけ接種間隔が開いたとしても、2回目接種は行うべきだろう。また、これらはファイザー新型COVID-19ワクチン『コミナティ筋注』(いわゆるファイザー製ワクチン)についての情報だが、モデルナ製ワクチンについても現状で他に比較するものがないことを考えれば、同様の類推を行うことが妥当である。

1回目接種とその副反応

接種当日

 接種は素人目に見ても簡単そうに見える。利き手ではない側の上腕の、だいぶ肩よりの方に、垂直に針を突き立ててスッと入れる。そのまま0.5mlを注射する。僕が行った接種会場では0.5mlシリンジが使われていたので、小さな注射筒の中のわずかな液体を全部注入される。多くの人が感想として述べているように、確かに全然痛くない。静脈注射ではないから、上手くささらなかったとか、血管が逃げて上手くさせなかった、みたいなことは全く起こらない。

 当日13時台に打ったが、その日は夜あたりから接種した側の腕が痛み始めた。重い筋肉痛のような痛みだ。

接種後1日目

 翌日(接種後1日目)も、腕が少し痛いぐらいで、それほど大きな副反応はない。副反応の腕の痛みをよく調べてみると、上腕二頭筋(腕の内側の筋肉)は問題なく動くので手や肘の折り曲げはできるが、上腕三頭筋(腕の背中側の筋肉)を使う腕を肩から上げていく動作はできない。それをやろうとすると痛む。

 つまり、腕自体の重量を机に委ねて前腕筋群を使うデスクワークには支障がないというわけだ。テーブルにあるコーヒーを持ち上げることはできるが、遠くから差し出されたコーヒーカップを片手で受け取る(つまり腕の重さを肩を支点として支えなければならない)といった動きはできない。いつも行くコーヒーショップで差し出されたコーヒーをいつも通り左手で受け取ろうとしてそれに気づき、慌てて引っ込めて右手を出した。もう少しでコーヒーまみれになるところであった。子供を抱っこするのは辛い。

接種後2日目

 接種後二日目には、副反応は消失した。

2回目接種とその副反応

接種当日

 1回目接種からちょうど4週間後、つまり28日後に、2回目接種を行なった。2回目接種自体は、前回やっているので気楽なものだ。今回はじっくり打っている様を眺めてしまった。普段は口から色々なものを接種しているが、こうやって血管に直接入れて身体を操作できるのは便利なものである。(もちろんそれで5Gに接続したりはしないわけだが……)

 怖いのは、そのあとだ。ファイザーに比べて副反応が強いと言われているモデルナ(ファイザー社のワクチンと、武田/モデルナ社のワクチンの安全性には違いがありますか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省)。接種後のアナフィラキシー対策での待機中に表示されていた案内には、8割方の人に発熱などの副反応があるとの説明。さあどうなることやら。しかし、接種が夕方16時台だったためか、その日はそれほど問題なく経過。

接種後1日目

 接種翌日(1日目)。朝から身体が重い。熱を測ると37.5度ある。まぁこれは、微熱程度である。午前中は在宅勤務で、資料整理など簡単な事務作業を進めていく。しかし昼頃になると、いよいよ辛い。熱を測るとなんと38.5度に達している。さすがにもう働く元気がない。午後は横になって過ごす。夜には39度近くまで熱が上がってきて、しかし子供たちが家の中を走り回っているのでやむを得ず、家にあったロキソニンを飲んだ。するとたちまち体が楽になり、30分ほどで体温が37度台まで下がった。薬効というのは大したものである。

 なお、解熱剤は接種前に飲んではいけないが、接種後に飲んでもワクチンの効果に影響はない。また、ロキソニンのようなロキソプロフェンの解熱剤よりカロナールなどのアセトアミノフェン系の解熱剤の方がいいという話がある。ただ、それは現在では試験によって覆されており、ファイザー臨床試験ではロキソプロフェンなど非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を接種した人でも効果が下がっていないことが確認されている(ワクチン接種後の解熱鎮痛剤)。厚労省も、ワクチン接種後の解熱剤使用を否定していない(ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省)。頓服というわけではないが、熱が上がってきてしまったら飲む、という形で対応すればいいだろう。妊婦や胃腸の弱い人などはカロナールを飲んだ方が良いが、それはむしろ解熱剤の副反応に対する配慮のためである。

 また、ロキソプロフェンは胃腸を荒らすので何か食べてから飲まないといけないが、発熱していると食欲がない場合がある、あるいは吐き戻してしまう場合がある。僕もその部類なのだが、今回の副反応の発熱では、全く食事には問題なく、食欲はないものの食べ始めると食欲が湧いてきて、普通量を食べてから解熱剤を飲むことができた。吐き気や嘔吐はもちろん全くない。発熱はしているが、胃腸の動きは正常だったということである。

接種後2日目

 さて、接種後二日目。熱は37度台で微熱程度。ロキソニンはもう飲まないで良いだろう。まだ本調子ではないが、問題なく通常通りの生活ができる。今日も在宅で仕事。しかしこの微熱、夜まで継続する。接種から55時間ほど経った二日目の夜になってようやく、症状が消失した。これが不思議なもので、症状が消失すると、それまでのさまざまな倦怠感、節々の痛みなどが嘘のように消える。風邪の時は、解熱後もだるさが残ったり、痛みがあったり、咳や鼻水が続いたりするのだが、そういうことは全くない。ワクチンの副反応は今までに経験したことのないような経過を辿る。

2回目接種後何日で効果が出るのか?

 武田のリリースでは、2回目接種28日後に抗体値が有意に上昇することを確認したとしている(Moderna社の新型コロナウイルス感染症ワクチンの日本における製造販売承認取得について)。国内での試験ではこれが最も短い間隔による効果の判定と言える。海外では、プラセボ群との対比から14日目には発症予防の効果が認められている(武田/モデルナ社の新型コロナワクチンについて|厚生労働省の「さらに詳しい情報」。あるいはコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)添付文書に詳しい)。

 ちなみに、ファイザーでは7日後のワクチン有効性が証明されているので、こちらの方が2回目接種の間隔と合わせて2週間早くワクチンの効果が得られる(ファイザー社のワクチンについて|厚生労働省)。実際に、毎日採血して抗体値の推移を測定した方(叢雲くすり(創薬ちゃん) (@souyakuchan) | Twitter)の作成したグラフを見ても、そのことは明らかである。

 

 いずれにせよ、2回目接種後直ちに発症しなくなるというわけではないし、また発症予防効果はあるが感染予防効果は検証されていない。変異株では2回接種後も感染しにくくなるわけではないことが明らかになってきている。ただ、発症しなければ感染しても恐れることはない。ワクチンが広がれば問題ないが、ワクチンを打てない人、打っていない人が多い現状では、誰かに感染させて死なすリスクがあるため、ワクチン接種後も感染予防は必要だ。特にマスクは、他人に感染させるのを防ぐのに大きな効果がある。

ワクチンを打ったら死ぬのか?

 なお、ワクチンを打ったら死ぬかもしれないという漠然とした恐怖でワクチンを控えている人もいるようだ。確かにアストラゼネカのワクチンは若い人が副反応で血栓ができて死ぬケースがあるとされ(ワクチン副反応で19人死亡 アストラ製、18歳未満の治験中止―英:時事ドットコム)、日本では最近まで認可されなかった。現在認可されているファイザーとモデルナのワクチンで、副反応で死ぬ人がいるかどうかはまだ確たることは言えないが、その可能性はかなり低いと考えられる。直近のレポートでは、COVID-19災害プロジェクト(2020.5.9~) | 日本災害看護学会にアップされているワクチン接種後の死亡報告例2がわかりやすく信頼できる分析を提供している。少なくとも、ワクチンを打たないでコロナにかかって死ぬ確率よりは、ワクチンを打って生き延びる確率の方がはるかに高いと言えそうだ。

 なお、現在ワクチンを打たない、打てない人々の間で感染による発症が広がり、病床が逼迫している。こうなると今度はコロナに罹らずとも何かの医療が必要な事象が起きた時に死ぬ確率は高まる。そういうことも含め、打てる環境にあるひとは積極的に打つことが望ましく、行政は打ちたい人に迅速に打つための環境整備をもっと挑戦的に進める必要があるだろう。

今後への願い

ワクチンの進歩への期待

 新型コロナウィルスはインフルエンザと同じように流行を繰り返していくことになり、ワクチン接種も継続的に必要になるだろう。毎年こんな副反応のあるワクチンを打たれたのではたまらない。ぜひ副反応の弱いワクチンが開発されてほしいものだ。

 また、mRNAワクチンは大きな技術の進歩だが、供給量の増加やコスト削減を大幅に進めていく必要がある。あるいは、シノバックのような不活化ワクチンで対応できるような程度に新型コロナウィルスの方が弱ってくれたら、それが一番望ましい。アストラゼネカのワクチンのように持ち運びが楽で使いやすいワクチンが広がってくれればそういったことは解決されるので、たまに血栓ができるという絶望的な問題が早く解消されることを願う。もちろん、その確率は交通事故に遭うより低いぐらいかもしれないが、わざわざワクチンを打ちに行って死にたくないというのが人情だ。確率論で片付けられるなら、こんなに頑張ってワクチン作らずとも、高齢者を中心にバタバタ死んでも経済を回して行ったほうが数年後の未来は明るい、という結論になりかねない。

 また、冒頭にも書いたが、間隔を空けた方が効果が高まるという研究もあり(アストラゼネカ製ではそのことが証明されている)、あるいはクロス接種(異なる種類のワクチンを打つ)でさらに効果が高まることも判明してきている(異なるワクチンの組み合わせ接種も「高い予防効果」=英研究 - BBCニュース)。今後より効率的で効果的な方法が見出されることだろう。

政策と個々人の行動選択

 日本は色々政策上の不備が言われているものの、世界的に見ても台湾と韓国に次いで死亡者の割合が少なく、経済損失もそれほど大きいわけではない(日本でのCovid-19と経済活動 | Covid-19と経済活動内資料、コロナ病床使用数増加の感染・経済への影響)。しかし、これからはそうはいかないかもしれない。今月からワクチンが行き渡る年末までの半年弱、中年層を中心に相当数の死者が出ることが予想される。

 ここには世代間の格差もある。例えば、高齢者は最初は緊急事態宣言で、のちにはワクチンで救済されたが、若年・中年層は感染リスクが低い当初に緊急事態宣言で経済的打撃を受け(これに比べれば年金生活の高齢者はほとんど打撃を受けなかった)、変異株が出て感染リスクが上がった時にはワクチンが来ずに苦しむことにった。もちろん若年・中年層は投票率も高齢者に比べて低いため政治的には特に尊重する理由がなく、当然の結果であるが、現実は残酷だと思わざるを得ない。

 また、随所にはさらに自分たちの首を絞めるような行動に出る人がおり、反ワクチン運動や反行動制限、果ては反マスク運動までもがあるという。それらはワクチン二回接種済みの高齢者にはありがたい話だが、ワクチンを接種できていない若年中年層には危険である。必ず回避したい。

 現状の世界最速に並ぶレベルの速いワクチン接種のペース(世界のワクチン接種状況|NHK)を維持しつつ(政治家の言によればそれは可能なはずだ——それを信じるかどうかは別だが。ワクチンの最新状況 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト)、行動制限は個々人が年末までしっかりやり、政府が低所得者層、特に子供のいる層をしっかり下支えし、それより上位の層には丁寧なコミュニケーションで行動制限に納得してもらう必要があるだろう。

 今のところ、低所得者層へのサポートと丁寧なコミュニケーションという二つはその場凌ぎにしかなされていないに等しい状況だ。

今も一斉休校の影響はある。食べるものがない子どもたちがいるのに、政治に救おうという積極的な姿勢が見えない(「コロナでどん底」1年無収入のシングルマザー 子は食パンと水道水で空腹しのぐ 一斉休校の余波は今も:東京新聞 TOKYO Web

という支援団体代表の声は、食べるものがある子供たちのいる家庭であっても、深く首肯せざるをえない。(「感染症と休園に苦しむ親たち - 読んだ木」参照)

為政者はここで話し合いをしてくれないものなのだろうか。不満が爆発していることについて耳を貸し、その気持ちを吸収しつつ説得的コミュニケーションを展開してくれないものだろうか。(西浦博教授が描く「私が最も恐れ、怯えているシナリオ」の“中身”(西浦 博) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

という感染症の専門家の意見も、傾聴されるべきだ。もちろん、実際にはそんなコミュニケーションが起きっこないので、我々が自分たちで「自己防衛」しなければならないのだろう。現状、人々は実際にそれを行っているように思える。というのも、感染が広がっているから人出が去年より増えているかのように思われがちだが、実際は去年と同じように人出が抑制されているからだ。

まぁ、去年のこの時期は緊急事態宣言下ではなかったので、今回の緊急事態宣言の人流抑制効果が皆無である、とも言えるのだが。

 また、ワクチン接種の優先順位も、本来ならより吟味されるべきであった。緊急時にはどうしても格差が顕在化してしまい、高齢者(優先接種)→大企業など(職域接種)→その他、という順番で進んでしまったことは今後反省が必要となるだろう。本来、高齢者と同時に介護・福祉施設等で働く従業員への接種を進めるべきであったし、大企業の職域接種より、若者への接種を先に進めた方が感染拡大抑止効果があるというシミュレーションもあった。また、年齢よりも小売業など接客業従事者への接種を進めた方が、ずっと起き続けている飲食店や小売店でのクラスター抑制効果があっただろう。低所得者から先に打って行って、打ち終わったら経済活動への制限を緩和するという方式も考えられた。しかしこれは後出しジャンケンであり、そんなことをいろいろ考えていたら時間が過ぎて問題が拡大してしまうため、今回のやり方はそれとして実際の現場のオペレーションを省力化したという点で評価できる。

 また、接種の順番が差別的だからと言って、逆に職域接種をできるのにあえて回避する理由にはならない。職域接種できる立場にありながらそれをせず、結果より弱い立場の人々を感染させたり、あるいは感染の恐れから他人の行動を制限させたりする結果になることは、接種の優先順位の格差を回避するよりも悪い結果をもたらすからだ。職域接種を皆がサボタージュしても、他の場所での接種が進むわけではない。大人数を統制しガバナンスできる大企業のさまざまなツールが職域接種に適合的であるという背景がそこにはあるからだ。

 他国との比較を論じる記事も散見されるが、この状況で他国と比較するには、前提条件が異なりすぎて厳しいところがある。特に、日本は人口が1億もおり、しかも高齢化が進んでいる、かつ生命の平等を重んじるが故に平均余命の長い国で、その高齢者のためのアプローチが優先されている、というところを踏まえなければ、より気軽に接種できたりハイテクな接種予約システムを使っている他国と比較してもあまり意味がない。それは、ワクチンに限らず、交通政策でもIT政策でもなんでもそうで、大人数の高齢者の存在を前提とした進め方の最適化を考えるという前提で、諸外国との比較などを行うことが望ましい。

ワクチン接種三回目(追記)

メモ書き程度だが、この記事に書いた↓

yondaki.hatenadiary.jp

 

その他

参考になりそうなブログ記事

 ワクチン関連の情報がアップデートされる記事。

crisp-bio.blog.jp

 この方の記事は接種までの流れと、ワクチンを取り巻く状況が詳細に整理されていてよかった。

starwave-disneyandtravellife.hatenablog.com

 同じ方のブログで、ワクチンと変異株の関係にも整理されていた。6月段階の情報なので少し古く、現在のようなデルタ株の感染拡大の情報はないが、ワクチン接種が広がったからといって楽観視はできないという適切な見解を示している。

starwave-disneyandtravellife.hatenablog.com

 

 思ったより、ブログでワクチンのことを書かれている方が少なかった。また何か見つけたらここに追記していく。

雑感

 コロナ禍による苦しみは、誰もが何らかの形で被っている。それが人々の間の対立を招いたり、困窮をもたらしたりすることは悲しいことだが、放っておけば必ずそういうことは起こる。できるだけ自分を律して、使えるサポートを最大限活用して、この状況を乗り越えていくしかない。余裕があれば、側の一人二人だけでも、なんとか手を差し伸べて苦しみを和らげたいものである。それは病気ということに限らず、この状況に伴うさまざまな面においてだ。

 ともあれ、まだ1年と少しが過ぎただけである。スペイン風邪は足掛け3年続いた。黒死病は5年以上続いた。ウィルスに限らなければ、満洲事変以来日本の戦時は15年、応仁の乱は11年続いた。絶望的な社会状況は、希望的観測に反して、案外長く続くものである。

 今ここで狼狽えているようでは、歴史の波を超えることなど到底できないぞ、と自分を鼓舞し、今日もなんとか生きのびる。